話題提供者1:久保岳夫(開成学園) テーマ:LMSを使ったオンライン授業実践報告:中学校,大学での例 話題提供者2:残間 紀美子(東京都立富士高等学校) テーマ:リモート授業実践報告~オンライン・オフラインでの工夫~公立中学校,高校での例
発表者1:肥田 和樹 氏(早稲田大学 教育学研究科 博士課程1年) テーマ:「発表指導」に関する現状調査:公立中学教員の場合 発表者2:浅利 庸子 氏(早稲田大学) テーマ:日本人英語学習者のFS使用頻度・タイプとスピーキング評価の関係について
課題図書:「高校英語授業における文法指導を考える」(アルク選書)
テーマ:「With コロナにおける英語教育」
発表者:望月 眞帆 氏(早稲田大学本庄高等学院) Emily Choong 氏(新潟市教育委員会 ALT) テーマ:CELTA Insiders
山村 公恵 (KLA会員)青山学院大学 アカデミックライティングセンター 助手 タイトル:Non-anthropocentric Orientation in Socially Oriented Applied Linguistics 研究発表1(含・質疑応答15分)小林 潤子 (TALK 会員) 駒澤大学 非常勤講師 タイトル:CAN-DOリストを使った英語教育と学習者の意識について―大学生を対象とした研究 研究発表2(含・質疑応答15分)田中 広宣(KLA会員)東京大学大学院 総合文化研究科 修士課程タイトル:日本人英語学習者の名詞句構造把握能力の発達プロセス
2020年度 第6回研究会【 TALK TIME 】
日 時:2021年3月27日(土) 17:15 – 19:00
会 場:オンラインZOOM開催
モデレーター:杉内 光成 氏(獨協埼玉中学高等学校)
テーマ:「ポストコロナ英語教育を考える」
【概 要】
新型コロナウイルス感染拡大防止をしながら、「学びを止めない」を合言葉に学校教育を何とか進めてきた今年度ですが、オンラインやオンデマンドでの授業、マスクをつけながらの対面授業、コミュニケーション活動や音読活動などが制限される中で行われてきた教室での授業など、「新しい形式での英語教育」にチャレンジしてきました。
今回のTALK TIMEでは、大学・高校・中学などそれぞれが活躍されている現場において、以下のことを振り返り、共有し、今後の英語教育の目指すべき方向を話し合い、考えあいたいと思います。
① 今年度の授業について
・今年度の授業で新たに試みたことは?
・それによる生徒の反応や成果をどう考えるか?
・音読やプレゼンテーション、グループディスカッションはどうやっていたか?など
② 今後の英語教育の目指すべき方向について
・今年の反省を踏まえて、各自の勤務校でどのような授業を展開していくか?
・コロナ禍における(小)中高大の連結をどう考えるか?など
TALKという学会は大学教授から公立私立中学高等の現場の教員、大学や大学院で学ぶ学生まで幅広い層の人々が所属し、意見を共有できる団体です。コロナ禍という事態であるからこそ、様々な立場からの意見に耳を傾け、知見を深め、今後の英語教育発展に携わる活力に変えていきたいと思います。
今回のTALK TIMEでは「今年度の授業を振り返って、今後の英語教育に生かす」ということをテーマに、それぞれの参加者にご意見をうかがい、考えを共有しました。
まず、今年度の授業についてどのような「新たな試み」を行なったかを意見交換しました。コロナ禍と言っても、どのような授業形式で進めてきたのかは学校によって千差万別です。ずっとオンライン形式のところもあれば、マスクをすればコロナ以前と変わらない形で授業を進めることができたところもありました。このように様々な環境下で授業を進めてきたので、それぞれの参加者からは多くの意見が挙がりました。それらをキーワードという形で集約すると、「デジタル教科書」、「音声関連の課題」、「全員の意見を共有するICT機能の使用」などのようなICTに関連したものと、「*My English Book」、「自律した学習者」といったICTがなくても行うことのできるものとなります。
*My English Book:参加者のある先生がコロナ下での休校期間、また夏期長期休暇を利用
して、中3向けに設定した自主課題であり、それぞれ好きな B5のノートを用意させ、1
日半ページ~1ページ程度使い、英語に関する好きなことでノートを埋めてもらった。
ICTに関連したキーワードは、授業内でも授業外でも行える試みであり、ポストコロナ時代の英語教育でも重要になってくると考えられます。一方、「My English Book」、「自律した学習者」はコロナ以前にも大事にされてきたものだと捉えることができます。「デジタル教科書」、「音声関連の課題」、「全員の意見を共有するICT機能の使用」、「My English Book」は学習者からの支持は高く、英語学習に対する意識の向上が見られたとのことでした。
「新たな試み」を通して私たちが得たものには、今後への課題も含まれています。話し合いの中で「オンライン授業ではコミュニケーションをとる頻度は減るのか?」という質問に対しては、多くの先生方が「減る」という回答をしており、授業に聞こえる生徒のぼやきが聞こえなかったり、学力の低い生徒が気軽に質問できなくなったりするという問題点を挙げられていました。さらに、英語におけるコミュニケーションよりも前の問題として、名前を覚え辛くなるのに時間がかかったりするなど「人間関係の構築」が困難になるということにも言及されていました。
また、オンライン授業での評価や成績算出についても意見交換をしました。通常ですと、課題やレポートを提出させたり、学期ごとに試験を行い、その結果から成績を出していました。しかし、オンライン上では公正公平な試験の実施が、個々の学習者に委ねざるを得ないことが多く、頭を悩ませることとなりました。その中で、「課題の量を増やし、試験の配点を低くする」ことや、「テストの難易度を上げる」、「回答時間に時間制限を設ける」、「小テストの回数を増やす」という工夫が紹介されました。
コロナ禍の授業実践から今後の英語教育に生かせるものを学び取ることを目的として行なったTALK TIMEでしたが、松坂先生の最後の言葉が印象的でした。
「スピーチについての本にこんなことが書いてありました。スピーチをして人を感動させる方法は“密”を作ることです。できるだけ余計な椅子を排除し、人と人との距離を縮めるのです。こうすることで連帯感が生まれます。現在は人と人との距離を離すことが大事であるとされていますが、コミュニケーションはやはり人と人との距離を縮めることが大切ですね。」
私たち英語教育に携わる者は、英語を教えることはもちろんですが、人とのつながりの大切さも教えることが大切なのだと感じました。教育や授業の根幹とは何かを考えさせられたTALK TIMEとなりました。
文責: 杉内 光成