2025年度 第1回研究会 【 TALK TIME 】

日 時:2025年4月26日(土)17:15〜19:00


会 場:ハイブリッド開催

    早稲田大学早稲田キャンパス3号館710教室, 及び,Zoom

    (早大正門から入り、右手にある2番目の校舎)

話題提供・司会:山口 高領 氏(秀明大学)

テーマ:「指導法を再考する」

【概要】
新年度第1回として、「指導法を再考する」をテーマにTALK会員のみなさまとお時間を過ごせればと思い、企画しました。話題のとっかかりとして、柳瀬(2021)で述べられている4つの事例を基にした日本での英語教育批判(pp.16-19)を紹介します。

1.  英単語が、文からも文脈からも独立したまま教示され評価される事例」への批判

2. 「同じ文・文脈でその語を何度も確認・再生させることを訓練する、トレーニング中心主義」への批判

3. 「言語の一義性ばかりを強調」し、「答えが一つにしか定まらない多肢選択的問題を、英語教師あるいは英語教育体制はことさらに好んでいる」のではないか。

4. 「自由な対話が少な」く、「即興的で創造的な対話をする機会が、現代の英語教育には少ない」のではないか

これら以外でも、参加者のみなさまとTALKができましたら幸いです。

<Reference>
柳瀬 陽介. (2021). 「学校英語教育は言語教育たりえているのか : 意味の身体性と社会性からの考察.」『 KELESジャーナル』2021年6巻, pp. 6–23. doi:10.18989/keles.6.0_6

下記のリンク(J-STAGE → KELESジャーナル)にて、オープンアクセスとして公開されています。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/keles/6/0/6_6/_article/-char/ja

PDFをこのご案内にも添付します。

【参加者後記】 私事でありますが、新年度から、英語教育のための意味論といった講義・演習を担当するにあたって、調べ物をしている際に、この柳瀬先生の論文に出会いました。この論文は、コミュニケーションを念頭に置いた「神経科学的考察と哲学的考察に基づく意味理論」を基に、英語教育の実践において建設的な批判を行っているものです。
 具体的な4つの批判は、どれもある程度は行われている現実に向けられています。現在施行されている学習指導要領には、言語活動の充実が謳われています。これは単純化すると、相手と意味のあるコミュニケーションを行うことです。今回の柳瀬先生の建設的な批判は、現状の安易なトレーニング志向に向けられていると感じました。(文責:山口高領)


2025年度 第2回研究会 【 講演&体験 】

日 時:2025年5月24日(土)17:15〜19:15

会 場:ハイブリッド開催

    早稲田大学早稲田キャンパス3号館404教室, 及び,Zoom

    (早大正門から入り、右手にある2番目の校舎)

発表者:江口 政貴 氏(株式会社エキュメノポリス)

テーマ: Intelligent Language Learning Assistant(InteLLA) の現在地点とこれから

司会:安田 明弘 氏(武蔵高等学校中学校)

【概 要】 本講演では、対話型AIと自動採点を統合した Intelligent Language Learning Assistant(InteLLA) の最新動向を紹介します。前半では、開発の背景と基礎技術(対話システム・自動採点)を概説し、ミニディスカッションを通じてアセスメント活用の可能性を探ります。後半は、中学・高校現場での導入が進む中で開発中の学習支援機能を中心に、教師と学習者双方をサポートする新機能について紹介します。それを受けて、「評価成果を学習へどう生かすか」「導入時の障壁と活用シナリオ」「AIで置き換えたい/残したい教師の役割」などを参加者の皆さまと共に議論できればと思います。

【参加者後記】Coming soon…


2025年度 第3回研究会 【 講演 】

日 時:2025年7月19日(土)17:15〜19:00

会 場:ハイブリッド開催

    早稲田大学早稲田キャンパス14号館401教室, 及び,Zoom

発表者:平沢 慎也 氏(慶應義塾大学)

テーマ: 認知文法から見る前置詞byの時間義——byは「までに」か?——

司会:久保 岳夫 氏(国際基督教大学)

【概 要】 以下の例の太字部分に見られるような前置詞byの時間義は,日本の教育現場では「までに」という日本語訳とセットにして導入されるのが一般的であると思われます。

[状況説明]Jerryは,アパートメントの合鍵を持っている隣人のKramerがキッチンで朝食を作っている音で目を覚ます。なお,Brandt Lelandはある会社の名前。
Jerry:   Kramer?
Kramer:  Hey, buddy. Hey.
Jerry:   It’s 8:00 in the morning. What the hell is going on?
Kramer:  Breakfast. I gotta be in at Brandt Leland by 9:00.
(Seinfeld, Season 8, Episode 3)
(https://youtu.be/0EUYv99bYBg?t=4445)

しかし,byの時間義について初めて明示的に学ぶ/考える/教わる学習者に対して,この導入の仕方は本当に適切なのでしょうか? 本発表では,教科書や参考書ではなく,小説や映画,TVドラマ,学術文章などの実例をじっくりと観察することを通じて,教師も学習者も「までに」の呪縛から一刻も早く解き放たれるべきであることを論じます。その上で,発表者なりの代替案(例文や訳語の提示の仕方)も提示します。ヒントは・・・・・・動詞の形です。
 ただしいきなりbyの分析を始めるのではなく,その前に30分ほど,「どのような言語観に基づいて分析するのか」について説明させていただく予定です。より具体的には,アメリカの言語学者Ronald W. Langackerの創始した認知文法(Cognitive Grammar)という言語理論が言語をどのようなものと捉えているか,本発表と特に関連が深い側面に絞って,お話ししたいと思います。

【参加者後記】
 講演者の平沢慎也先生は,日々映画やドラマ,小説などから様々な英文の用例を蒐集し,研究に勤しんでいる大変誠実な英語学者です。本講演では,先生の研究分野である認知言語学,とりわけ使用基盤モデルと呼ばれる分野における「前置詞byの時間義」に関する研究をお話しいただきました。従来,時間義のbyは多くの参考書などでは「〜までに」という訳語で説明されることが一般的でしたが,本講演ではこの一見当たり前のように思われる事実をすんなり受け入れてもいいのだろうかという問題に切り込みました。
 まず,byと共に使われうる動詞には大きく分けて,動画タイプと静止画タイプの2種類があることが指摘されました。また,英和辞典などで挙げられている時間義byの例文の多くが動画タイプの動詞を使ったものであるものの,実際の用例を広く見ると静止画タイプと共起しているものが多いということが指摘されました。それぞれの動詞タイプの用例を参照しながら,この問題を整理されました。実際の使用頻度は動画タイプよりも静止画タイプのほうが高く,意味の上でも静止画タイプのほうが素直であることが指摘されました。また,日本の英語教育環境では動画タイプと共にbyを教えられるのが伝統的であるのに対し,静止画タイプと共にbyを教えることは従来あまりなかった革新性のある観点であることも指摘されました。こうした事実があるものの,実際に試験に出題される形は動画タイプであることが多いことも指摘されました。
 日本の英語学習者は,初学者の段階(e.g., 小中学生)から中上級者の段階(e.g., 大学生)まで訳語に頼ることが多い事実を考慮すると,本研究は多くの教育的示唆に富んだ研究であるといえます。とりわけ,公式化された特定の訳語に頼りすぎてしまうと,現実で使われている豊かな用例の実態を見過ごしてしまうという重要な事実を多くの参加者に再認識させるものでした。(文責:久保岳夫)


2025年度   第4回研究会 【 講演 】

日 時:2025年10月25日(土)17:15〜19:00

会 場:ハイブリッド開催

    早稲田大学早稲田キャンパス3号館703教室, 及び,Zoom

講演者:中村 優香 氏(玉川学園)

司会: 望月 眞帆 氏 (早稲田大学本庄高等学院)

テーマ:「私立の小学校・中学校における英語教育の実践と国際交流活動について」 

【概 要】現在、東京都町田市の私立玉川学園において、小学校および中学校の英語教育に携わっています。本発表では、日頃の英語授業の実践をご紹介するとともに、国際交流活動についてもご報告いたします。なお、2023年度にも同様のテーマで発表いたしましたが、その後のICT導入によりいくつかの変化が見られました。本発表では、そうした変化の様子をお伝えするとともに、デジタル化によって得られた効果や今後の課題についても考察いたします。  

【参加者後記】
中村優香先生の今回のお話を伺い、指導方針に確固たる哲学がある教育機関の強靭さとしなやかさを改めて感じた。

ご発表前半では小学校と中学校での英語の授業について、後半では国際教育のコロナ禍後の展開について紹介されたが、後半の国際教育の話題で冒頭にご紹介があった玉川学園創立者の小原國芳のことば、

「教育というものは、教室の中だけで行われるものでなく、地球上のあらゆるところが、宇宙のすべての場所が教育の現場でなければなりません。」

を、同校のホームページで調べ直したところ、同じページに小原氏の魅力的なことばがもう一つ掲載されていた。(注)

「今、『地球はわれらの故郷なり』という広い視野と気概を持った国際人が求められている。語学の習得に満足することなく、豊かな国際感覚を養うため、地球のあらゆる場所で行えるany placeの教育を目指している。」

朝刊を開くたびに辛くなる毎日に、勇気を持てと励ましてくれる言葉だと思う。同時に英語教師にとってこの2つのことばは、外国語の力の向上の機会とその力を使って社会を構築していく喜びを味わう機会の両方を、教育の両輪として提供し続けることがミッションだと求める厳しい言葉だとも感じる。中村先生とご同僚の方々が、そのミッションにチームとして根気よく取り組んでいらっしゃることがよくわかった。

授業の紹介では5ラウンドシステムでの実践例に加え、中学校に導入されたAI教材(abceed)の活用事例のお話があった。担当の先生方が配信する音読や単語学習の課題に生徒が自分のディバイスを使って取り組み、担当者が学習状況をモニターするというものだ。小学校での豊かなインプット、中学校でのfluencyとaccuracyを大事にした授業計画、さらに多くの交流校との相互訪問や国際フォーラムで「国際感覚」を体感する機会。生徒さんが国際人として健やかに育つ場がつくられるには、日常と非日常の双方の充実が欠かせないと感じた。

中村先生のご講演の最後のまとめで使われたキーワードをご紹介する。

  • 教員の自己研鑽と教員同士のチームワーク
  • 教育現場でのAI活用のための知識のアップデート
  • 送り出し校とホスト校としての海外研修プログラムの充実化

ひとつひとつは他の場でも語られることだが、これらすべてを教育哲学のもとに統合させ、状況の変化に応じてしなやかに発展させている玉川学園の先生方に拍手を送りたい。

(注)玉川学園 「玉川豆知識 No.209 本学では創立以来「本物に触れる教育」を推進 4.地球はわれらの故郷である」

https://www.tamagawa.jp/introduction/tamagawa_trivia/tamagawa_trivia-209.html

(文責:望月眞帆)


2025年度   第5回研究会 【 TALK TIME 】

日 時:2025年12月27日(土)15:00〜16:40
       
会 場:ハイブリッド開催
    早稲田大学早稲田キャンパス3号館404教室, 及び,Zoom
 
司会: 山口 高領  (秀明大学)

テーマ:「改定ローマ字のつづり方から他教科横断まで」

【概 要】2025年8月20日に文化審議会が文部科学省に提出した「改定ローマ字のつづり方(答申)」
https://www.bunka.go.jp/seisaku/bunkashingikai/sokai/pdf/94261201_01.pdf
が出ました。これを踏まえ、音声と文字の関係、英語教育、国語教育との連携、他教科横断まで、気軽に意見交換が行えることを望んでいます。

【参加者後記】 今回のTALK TIMEはいくつかのセクションに分かれて行われました。
 まず、「改定ローマ字のつづり方(答申)」を共有して、この答申の目的が、英語教育というよりも、国語(日本語)でのローマ字のつづり方のあり方について、これまでの経緯と現状を認めて、ローマ字のつづり方を将来にわたり安定させることにあることを確認しました。定着した固有名詞の現状を認めるだけでなく、自分の名前の表記など、個々人の意向を大切にするという考え方もこの答申に含まれているため、単純にヘボン式への傾倒ということではないことが重要です。
 次に、日本の小学校英語教育における英語とそのつづりの指導として、2種類のフォニックスについて、意見交換がなされました。さらに、西垣・物井・星野らによる「児童のメタ言語分析に基づく外国語科と国語科の連携の試み」を共有しながら、初等教育における日英のことばに対する気づきの指導について話し合いました。
 今回の答申を受けて、これから小学校での国語や外国語の学習指導要領が出てくると思われます。日本語のローマ字のつづり方は、国語教育だけでなく、外国人が日本語を学ぶ手段としても欠かせない要素であることを改めて感じました。(文責 山口高領)

参考文献
西垣知佳子・物井尚代・星野あゆみ・橋本ゆかり・安部由紀子・矢澤まどか・…石井雄隆. (2021). 児童のメタ言語分析に基づく外国語科と国語科の連携の試み. 『小学校英語教育学会誌』, 21(01), 176–191. https://doi.org/10.20597/jesjournal.21.01_176