2021年度   第1回研究会 【講演 】

日 時:2021年4月24日(土) 17:15 – 19:00
会 場:オンラインZOOM開催      

発表者:阿野 幸一 氏(文教大学)
テーマ:小学校教科化を受けた中高の英語指導と新しい3観点評価

司 会:浅利 庸子 氏(早稲田大学)


【概要】

2020年度から小学校で教科としての外国語学習がスタートし、2021年度から中学校で、そして2022年度から高等学校で新学習指導要領が施行されます。中学校の教科書も大きく変わり、これまでの4観点の評価が3観点の評価へと変わります。小中高の連携をどのように考えたらいいか、そして、3観点の評価を英語指導にどう生かすかについてご提案させていただき、みなさまとよりよい英語指導と評価について考える機会となれば幸いです。

【参加者後記】

小学校において英語教育が教科としてスタートすることで、中学・高校がどのように対応すべきか、大変勉強になる素晴らしい時間であった。特に、中学・高校教員の役割として「中学教員は知識の整理+上書き」が必要で、「高校教員はこれまで学んだ知識を組み合わせて活用」できるように生徒への支援を行う必要性を改めて学ぶ機会となった。小学校での教科化を受け、中学・高校教員は「それまでの学習を引き継ぐ」イメージを持って指導する重要性が挙げられた。

評価項目がこれまでの4観点から3観点に変わることで、どのような活動が、どの観点に当てはまるのか、具体例を交えて解説していただいた。そしてなにより、評価は生徒の学習改善につながるように、教師の指導改善につながるように活用する必要性を学ぶ素晴らしい機会となった。


2021年度   第2回研究会 【 ワークショップ 】


日 時:2021年5月29日(土) 17:15 – 19:00

会 場:オンラインZOOM開催

発表者:久保 岳夫 氏(開成学園講師)

テーマ:英文朗読におけるイントネーションの明示的選択:『不思議の国のアリス』の冒頭部分を例に

司 会:浅利 庸子 氏(早稲田大学)


概 要】


英語学習において音読の重要性が高いことは言うまでもありませんが,多くの種類の英文構造や文脈に即応して音読するとなると,「練習量」や「慣れ」といった比較的明示性の乏しい量的な概念に委ねがちとなり,英文のどういった音声面,とりわけイントネーションに着目して音読すればいいのかという質的な概念は見過ごされがちになってしまいます。本発表では, O’Connor & Arnoldらによってまとめられたイントネーションシステムを概観しながら,Alice’s Adventures in Wonderland(邦題『不思議の国のアリス』)の冒頭部分を例に,英文構造のどういった部分に着目してイントネーションを選択すべきかを考えます。

【参加者後記】 

講演は、おおまかに3つの部分に分かれていた。第一に、J. D. O’Connor and G. F. Arnold, Intonation of Colloquial English, 2nd ed. (Longman, 1973)の枠組みにのっとり、イギリス英語のイントネーションに出現する「チューン」の各部分が紹介された。第二に、それらの部分が組み合わさっている典型的な「音調群」のうち、下降調に焦点が当たっている3種類が紹介された。第三に、『不思議の国のアリス』の冒頭部分を朗読するとすれば、どのようなイントネーションを使えばよいか、という考察が行われた。 

第一の、チューンの部分に関する説明においては、英語の文を言うときに行うべき6項目の事柄が列挙された。すなわち、英語を言う人は、(1)言うべき部分の音節数を数え、(2)強勢の位置を把握し、 (3) 核の位置を把握し、 (4)核音調を選択し、 (5)核の前にある音節(もしあれば)の言い方を考え、(6) 核の後ろにある音節(もしあれば)の言い方を考える必要がある。 

第二の、音調群に関する説明においては、(a)「高頭部(または階段頭部)+低下降調」、(b)「高頭部(または階段頭部、または高下降調)+高下降調」、(c) 「上昇頭部(または登頂頭部)+高下降調」のパターンが紹介された。 

このあと、話題は、第三の、具体的な文に具体的なイントネーションを当てはめる作業に移った。ここでは、第一の部分で挙げられた5種類の作業が必要になる。講演者は、『不思議の国のアリス』の冒頭の60語弱の英語を使い、これを3つの短い部分に分け、それぞれの部分をどのようなイントネーションで朗読すべきかを、練習問題形式で参加者に問いかけた。また、講演者なりの解答を紹介し、実際に音読を行った。 

以上列挙した各概念の詳細をここで述べるスペースはないが、講演を通して、(ア)イントネーションは分析可能であること、(イ)イントネーションは小さなパーツから成り立っており、パーツが組み合わさっていくつかの典型的なメロディーが出来上がっていること、(ウ)こうしたメロディーは、話者の気持ちを反映していること、(エ)メロディーの選択については、必ずしも正解がひとつあるわけではないこと、といった点が伝わったと思う。 音読指導は英語教育において広く行われているが、強勢の位置や区切りに焦点が当たることが多く、イントネーションが分析的にかつ詳細に扱われることはまれである。今回の講演は、音読指導に専門的な知見を取り入れる試みを示したものとして、非常に意義のあるものだった。この分野で重要な文献がカバーされた参考文献リストも提示され、有用な情報が豊かに提供された会となった。[文責:松坂ヒロシ]


2021年度   第3回研究会 【 講演・ワークショップ 】

日 時:2021年6月26日(土) 17:15 – 19:00
会 場:オンラインZOOM開催      

発表者:守屋 亮 氏(早稲田大学教育学部 助手)
テーマ:学習者の自律を促す英語学習アドバイジング:多様な形態のセッションに着目して
司 会:肥田 和樹 氏(早稲田大学教育学部 助手)


【概 要】
外国語学習は教室内で完結するものではなく、近年の学習機会や学習リソースの多様化に伴い、教室外での学習も重要性を増しています。本発表では「主体的な学び」を支える学習者オートノミーに着目し、それを育む実践例の1つである英語学習アドバイジングを取り上げます。英語学習アドバイジングはアドバイザーと学習者の協働的な対話による個別的なセッションが主ですが、教室内アドバイジングや文書アドバイジング、学習者同士によるピア・アドバイジングなど、常駐のアドバイザーが居なくても様々な形態でそれぞれの文脈に応じて取り入れられています。当日は学習者オートノミーや英語学習アドバイジングの研究を概観し、実際のセッション例やアドバイザーに求められるスキルなどについて紹介します。加えて、アドバイザー・トレーニングなどで扱われる複数のアクティビティーを通して、少しでもアドバイジングを体験してもらえたらと思います。実践のフィールドや学習者層はそれぞれ異なれども、参加者の方々と明日の実践へのヒントを一緒に考えていければ幸いです。

【司会者後記】

講演の前半では、過去の研究を概観することで、学習者オートノミーとアドバイジングについて紹介され、後半には実際に生徒・教員・観察者に分かれロールプレイを行なった。

学習者オートノミーは「自立」ではなく「自律」を示し、自分の学習に関する意思決定を自分自身で行うための能力であり、学習の目的や内容、学習のペースや場所などを自分で選べることである(青木&中田, 2011, p. 2)。さらに、自律的学習態度を育成するためには、学習者中心の教育が必要であり、その中で教員は学習者の必要に応じて支援をする立場である(津田, 2013, p.44)ことも紹介された。

言語学習アドバイジングとは、学習者との対話を重要視し「自己主導型学習」を促す支援活動である(黒田, 2016)。さらに、アドバイジングの必須3スキルとして、「承認:相手の存在を認め、問題点や解決策を一緒に考える」「傾聴:相手に共感しながら耳を傾け、相手の主張を捉える」「質問:相手に気づきを与え、対話を深める」が挙げられた。

実際のアドバイジングセッション例をもとに、アドバイザーの発言や学生の発言を分析し、使用されている言葉や相手の発言の引き出し方などを学んだ。そして、講演会の参加者がそれぞれアドバイザー、相談者、観察者の役割を演じながら、実際にアドバイジングセッションを体験した。

目まぐるしく変化する英語教育において、ポスト・コミュニカティブ・アプローチの1つであるアドバイジングを学び、実際に体験することで、これから自律した学習者を育成するためのヒントを学ぶことができ、有用な情報と体験がふんだんに盛り込まれた会となった。[文責:肥田和樹]