日 時:2020年10月31日(土) 17:15 – 19:00
会 場:オンラインZOOM開催
発表者1:肥田 和樹 氏(早稲田大学 教育学研究科 博士課程1年)
テーマ:「発表指導」に関する現状調査:公立中学教員の場合
発表者2:浅利 庸子 氏(早稲田大学)
テーマ:日本人英語学習者のFS使用頻度・タイプとスピーキング評価の関係について
【概 要】
1. 肥田 和樹 氏
2017年に新しい学習指導要領が公示されたことにより、「やりとり・発表」に対する関心が日本全国で高まり、2020年には幅広い地域の公立中学校で発表活動が行われている現状が文部科学省の調査によって明らかになりました。しかしながら、British Council(2019)が行った調査では、公立中学教員の多くが生徒の発表活動に対する指導を十分に行えていないと答えています。つまり、公立中学校では発表活動を取り入れる一方で、発表活動に対する指導があまり行われていない、という現状があるのでは、と考えます。この現状を解決するためには、「発表指導が充分に行えない」現状を改善するための支援が必要となります。そのためにはまず、大規模調査では明らかにされない、中学英語教員の「発表指導」に対する意識・現状を詳しく調査し、「発表指導」が充分に行えていない原因を明らかにする必要があると考えます。今回の発表では、実験的に3名の公立中学英語教員に対して行ったインタビュー調査の結果を中心に報告します。さらに、今後の大規模調査に向けたアンケート項目を提示したいと思っています。まだまだ検討段階でありますので、多くの意見やアドバイスを頂けると幸いです。
2.浅利 庸子 氏
日本の英語教育において、学習者のスピーキング能力がさほど向上していないことが大きな課題となっている。その根本的な原因の一つとして、学習者の言語能力に定型的言語表現(formulaic sequence, FS)およびそれを使用する能力が十分育成されていない点が挙げられる。FS とはひとつのまとまりとして記憶の中に備わっているパターン化した表現を意味する。FSは流暢でかつ正確に話すために必要不可欠であることがわかっているのにもかかわらず、国内において研究および教育は盛んに行われていない。10月の例会ではL2学習者のFS使用頻度及び使用タイプはどのようなものか。また、FS使用頻度及び使用タイプがどのようにスピーキング評価へ貢献するか、について発表します。
【参加者後記】
「『発表指導』に関する現状調査:公立中学教員の場合」 肥田和樹
「発表」や「やり取り」が、新学習指導要領に取り入れられたことにより、多くの先生方が、指導の問題を抱えていると思います。3名の中学の先生方のインタヴューを紹介してくださいましたが、3人それぞれのやり方があり、統一した指導内容や指導法を考案するのは、中々難しいだろうと実感しました。実際に教室では、個人指導は難しく、効果ある指導を行うのは、大変であると思います。小学校からの英語も始まり、今後、生徒達も発表経験をして中学に来るようになります。現状を踏まえて、「効果的な指導方法」など、提案できるような研究を進めて頂きたいと思います。
「日本人英語学習者のFS使用頻度・タイプとスピーキングの評価の関係について」 浅利庸子
日本人のSpeakingの能力に関しては、文部科学省の現状報告でも、常に低迷している状態です。この現状を何とかするためには、Formulaic sequenceを扱った研究はとても参考になります。FSと英語能力(Fluency, Accuracy, Lexical variation, Pronunciation)の相関が、かなり高くでていて、192のデータの分析結果なのでかなり納得できる数字だと思いました。英語の能力があがれば、FSが増えるのも当然ではありますが、英語学習の際の重要なポイントとして指導に生かしていけると思いました。
お二人ともコロナ禍で、研究環境がままならない中、研究を進められていて意欲と努力に拍手を送りたいと思います。会員の方、参加頂いた方のやる気や意欲を喚起してくださったと思います。お二人の今後の研究の躍進を期待しております。
文責:小林潤子