2011年度 第1回研究会(研究発表)

日 時: 2011年4月23日(土)17:00~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

『コロケーション研究の可能性』

発表者: 小屋 多恵子 氏[法政大学]

司会者: 下山 幸成 氏 [東洋学園大学]

【概要】

日本でも2000年代初めからより多くの研究者の注目を集めているコロケーションについて以下の3点から説明していきます。

これまでのコロケーション研究:コロケーション学習の重要性を基に、国内外のコロケーション研究の流れを概観します。

最新のコロケーション研究:コロケーション研究の最新情報を報告します。

これからのコロケーション研究:今後どのようなコロケーション研究が必要であるかを教育現場の問題点を踏まえて提案します。

発表後、上記の内容を踏まえて、参加者の皆さんと学校でのコロケーション指導についてディスカッションしていきたいと思います。

【司会者後記】

本発表は、コロケーション研究の過去・現在・未来をすべて網羅するような内容の濃いものであった。コロケーションという言葉の様々な定義から始まり、これまでのコロケーション研究の概観、指導の重要性、辞書編纂とのかかわり、最近の研究成果報告、に触れながら、最後には現場を踏まえたこれからの研究と指導に言及した。発表後の質疑応答では、コロケーションを活用した語彙指導の必要性を感じる参加者が多かったせいか、参加者の多くが発言をした、熱気あふれる会であった。

個人的に特に興味があったことが2つある。1つは、流暢で適切な言語使用にはコロケーション知識が不可欠だという内容である。英語母語話者の日常生活で話したり書いたりする表現のうち70%はコロケーションから構成されていて(Hill 2000; 53)、話し言葉の58.6%、書き言葉の52.3%が定型表現から成り立っている(Erman and Warren, 2000)とのことである。実際にどのように計算した結果であるかはわからないが、定型表現の重要性を改めて感じた。

もう1つは、コロケーション表現とフリーコンビネーション表現の意味を判断する場合に、脳内血流量が学習者と母語話者の間でどのように異なるかを光トポグラフィーを用いて測定した実験結果である。母語話者は言語野のみが活性化し、かつコロケーションの処理には脳の負荷が少ないのに対し、学習者では言語野以外の部分にも活性化がおきるだけでなく、その活性化に統一的なパターンが見られず、コロケーションの処理にも脳に高い負荷がかかっていることが明らかになったとのことである。

いままでの自分の経験を振り返ると、語彙や文法だけでは流暢で適切な言語使用には到達できないと感じていたため、使用場面の観点から語彙や文法をとらえ直し、定型表現を音声の固まりのように意識して身につけようとしてきた。そのために自分が行なう指導でも同じようなことを意識してきた。ただ、その内容はあくまでも直観的であり、感覚的なものであった。今回の発表でコロケーション研究も科学的になってきていることを知り、その研究成果を取り入れた指導を自分も取り入れていきたいと感じた。

文責:下山幸成


2011年度 第2回研究会(研究発表)

日 時: 2011年5月28日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

「大学入試センター英語リスニング試験の妥当性検証」

発表者: 柳川 浩三 氏[法政大学]

司会者: 山口 高嶺 氏[早稲田大学(非常勤講師)]

【概要】

1. はじめに

一般に、言語テストではその妥当性(Messick 1989)や有用性(Bachman and Palmer 1996)が中心的命題である。大学入試センター英語試験にリスニング試験(以下、センターリスニング試験)が導入されて6年が経ち、リスニング試験はすっかり定着したように見える。しかし、センターリスニング試験の妥当性検証は十分に行われてきたとは言えない。

そこで、本研究では、センターリスニング試験の妥当性を検証することを目的とし、その検証にあたっては、以下の考え方(Socio-cognitive validity, Weir 2005)に基づく。

言語テストの妥当性を担保するためには、言語テストが想定する目標言語使用領域(target language use domain, Bachman and Palmer 1996)をまず特定し、その領域に特徴的な文脈情報(要因)を可能な限りテストに反映させ、それによってその領域での受験者(言語使用者)の認知処理を最大限反映させることが重要である。これにより、当該テスト結果から推測される受験者の当該言語能力に関わる情報の質と量が高まる。つまり、テストの有用性が高まる。

2. 今までの経過

そこで、本研究ではまず、L2リスニングの認知処理モデルを構築し、次にリスニング(試験)に影響を与える様々な文脈情報(要因)を包括的に抽出した。そして、その枠組みを用いて、過去3ヵ年(2007年から2009年)のセンターリスニング試験を分析し、妥当性検証を行った。また、併せて、大学入試センター試験が基づくべき学習指導要領との整合性も検証した。その結果、現行のセンターリスニング試験には、妥当性を脅かす以下の8つの要因が浮かびあがった。

本文の2度聞き

標準的北米英語のみの使用

英語母語話者のみによる発話

非明示的情報を問う質問項目の相対的少なさ

3人以上の会話の欠如

言いよどみの欠如

会話の重なりの欠如

非直線的談話の相対的少なさ

3. 発表部分

続いて、上記の8つの要因に2つを加えて計10の要因について、センターリスニング試験において、(妥当性を高めるために)、改善すべき優先度合いを調べた。調査方法は、5件法Likert scaleによる質問紙法で、対象は高校英語教師110名と現役高校3年生391名であった。抽出された8つの要因以外に加えた2つの要因とは、発話速度とsandhi-variation (例. 同化・脱落・弱化など、Henrichsen 1984)である。この二つは、多くの先行研究からL2リスニングに大きな影響を与えることが示されている (ex. Brown and Brown 2006, Suzuki 2008)。分析方法は、ラッシュモデル分析と古典的方法を併用した。質問紙調査の結果、英語教師と高校3年生に共通して、sandhi-variationの優先度合いが最も高かった。 この結果を受け、現行のセンターリスニング試験において、sandhi-variationが十分取り入れられているかどうかを調べた。分析は、言語テストおよびL2リスニングの専門家、計二人が行った。分析の結果、現行のセンターリスニング試験ではsandhi-variationが一定程度取り入れられているものの、十分ではないことが示された。

4. 実行中の研究(間に合えば結果を一部報告)

本研究では、さらに、sandhi-variationがリスニングテスト結果(項目難易度他)と受験者の認知処理に与える影響を調べることを通じて、sandhi-variationが大学入試センター英語リスニング試験の妥当性に与える影響を検証する。

リスニング学習やセンターリスニング試験に関する高校3年生の意識調査結果も併せて報告する。

(参考文献 省略)

【司会者後記】

 柳川さんの発表は、研究面・教育面で大変刺激を受けるものだった。

 発表では、柳川さんご自身のこれまでの研究の大きな4つの流れが紹介されており、最初の3つの研究課題が、最後の4番目の研究課題にしっかりと接続されていた。

 今回のTALKでの発表では、特に、3番目の研究課題「英語教師・高校生英語学習者が、英語のセンター試験に関して、柳川さんご自身のそれまでの研究課題1・2から導きだされた項目に対して、どの程度改善するべきと考えているか」を、アンケート調査にて行った結果、特にsandhi-variationがもっとセンターリスニング問題の音声に入ってよいことが、ラッシュモデルという分析方法も用いながら、示された。センター試験を受ける予定のある高校生でさえ、この結果を支持するデータが出されたことに驚かされた。

 そして、この3番目の研究課題の結果から、4番目の研究課題が提示されている。すなわち、sandhi-variationの有無が、学習者の認知処理に与える影響は何か、である。ひいては、大きな4つの研究課題全体を踏まえて、センター試験の妥当性を高めることに、今まで以上にsandhi-variationが入ったリスニング題材を増やすことが寄与するかどうかが今後明らかにされるという。

 教育面で刺激を受けたのは、発表後の質疑応答で、松坂先生や望月さんが指摘していたが、リスニングに対する学習者の態度、すなわち、「リスニングは音声のみを扱う作業である」、「リスニングの成否は耳のよさで決まる」といった思い込みである。柳川さんが発表された学習者の自由記述アンケートには、そのように解釈できるものがあり、それは、松坂先生や望月さんご自身がこれまで接してきた学習者の一部に感じられる傾向だという。私自身もそのような思い込みが強い学習者に多く接してきたという実感がある。

 学習者は、単純な解決策を求めるものだと思う。そして、リスニング活動で初学者が感じ取りやすいのは、音声の難しさであり、知らない単語なのだろう。音がほとんど聞こえなければ、リスニングができないのは事実である。知らない単語が多ければ、理解ができないのも事実である。しかし、ある程度、音から内容がわかっていれば、すべてを1つ1つ聞き取っていないのも事実である。音声指導において、こうした多面性を適切に伝えることの重要性を感じた。

文責:山口高嶺


2011年度 第3回研究会(ワークショップ)

日 時: 2011年7月2日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 16号館 3階 305教室

「スピーチコーチの役割 (2) 音声指導について」

発表者: 松坂 ヒロシ 先生[早稲田大学]

司会者: 残間 紀美子 氏 [東京都立富士高等学校]

【概要】

昨年7月の月例会で、「スピーチコーチの役割」と題したワークショップをしました。そこでは、スピーカーの準備のうち、スピーチ原稿が出来るまでの過程を話題にしました。あの過程がスピーチコーチの仕事の前半だとすると、今回は後半のほうの作業を取り上げたいと思います。後半の作業の大部分は音声指導とデリバリーの指導です(ここでは、私は、前者と後者とは一応分けて扱えるとの考えに立って両者の用語を使っています)。

音声指導の中核はいわゆる発音指導ではありません。むしろ、音声指導をするコーチの大きな責任は、スピーカーが、スピーチの意味の流れを音声という手段を使って聴衆に理解させることが出来るよう、支援することだ、と私は考えています。音声指導のこうした面に焦点を当てれば、「音声指導はすなわち意味指導」という見方をすることができます。今回のワークショップでは、具体的なスピーチを例にとり、その各部分を、どのような音声によって表せばよいか、参加者皆さんにお考え頂きたいと思います。

【司会者後記】

発表者は、2010年7月3日に「スピーチコーチの役割」と題したワークショップを行い、コーチの立場から、スピーチ原稿の作り方を論じたが、今回のワークショップは「スピーチコーチの役割(2)」として、2010年にカバーできなかった音声指導を扱った。スピーチコーチが行う音声指導には、第一段階として分節音の指導、第二段階として文や節レベルのプロソディーの指導、第三段階としてキーの選択、第四段階としてポーズの置きどころの決定、第五段階としてスピーチ全体の調子(これを発表者は「山と平地の設計図」と呼んだ)の決定、といった項目がある。コーチの作業は、しかし、実はこれらの段階にきれいに分けられるわけではなく、行きつ戻りつしなければならない、という面もある。

第一段階の分節音の指導は、普通のスピーカーはもとより、帰国生のような英語発音がうまいスピーカーにも必要である。うまい生徒も、日ごろ気づいていないアラをかかえていたり、ステージに向いた明瞭な発音ができなかったりすることがある。コーチは、当然、個々の音のみならず、音のくずれや連結について、かなり突っ込んだ指導を行わなくてはならない。連結の指導で有効な方法に、ことばを後から作っていく方法がある。たとえば、When I was growing up in rural Nagano … というフレーズは、Whe- | -n | I | was | grow- | -i- | -ng | u- | -p | i- | -n | ru- | -ral | Nagano … と区切り、 ‘Nagano’、‘-ral Nagano’、 ‘rural Nagano’、‘-n rural Nagano’、‘in rural Nagano’、‘-p in rural Nagano’といった音の連続を、この順番で練習させる。また、コーチは、しばしば、スピーカーが苦手とする音の数を減らすべく、原稿を書きかえる。英語教育の理想から言えば、苦手な音を練習により克服すべきだが、限られた時間でスピーチの音声面を仕上げるために、このような手法を使う。ワークショップでは、実際のスピーチの単語差し替えの記録が紹介された。

第二段階の、文や節レベルのプロソディーの指導については、まず、文レベルのプロソディーの決め方(イントネーショングループへの分割、核音調の位置の決定、など)について簡単な復習があった。核音調の位置(トニシティー)は、センテンスにおける新情報、旧情報の位置関係で決められるが、例外として、The DOGs escaped. の場合のように、センテンスの意味がひとまとまりと考えられる場合、イントネーション上もそのセンテンスがひとまとまりとして扱われる。ワークショップでは、実際のスピーチを使ってトニシティーを決めるエクササイズが行われた。

第三段階で取り上げる「キー」とは、イントネーションの一側面であるが、よく話題になる音節に付随する細かなピッチの動きではなく、それらを載せた大きな動きをさす。いわば前者は「さざなみ」であり、後者は「うねり」である。キーが何を表すのに役立つかと言えば、(1)キーを変えることにより意味の区切りを表したり、(2)直接話法における伝達節と被伝達節との関係を示したり、(3)中心的情報と付随的情報との関係を示したり、(4)対照的なふたつの情報のコントラストを強調したり、(5)単語の長いつらなりがその長さにもかかわらずひとまとまりのことばであることを示したりすることができる。発表者は、検定教科書準拠の録音教材や実際のスピーチの原稿を話題にし、文章の読み方を考察した。

第四段階の、ポーズの置きどころの決定については、発表者は、オバマ大統領の演説の録音を使用しながら、複数の項目がまとめて提示されるようすを「かきあげ天ぷら」と呼んで、意味のまとまりを表すポーズの重要性を論じた。

第五段階の全体の調子についての考察とは、スピーチ全体をながめ、どこに山を持ってくるか、どこを平地と考えるか、といった総合的な音声設計のことである。この作業の成否は、スピーカーが、自分の書いた原稿をいかに自分で深く理解しているか、にかかっている。スピーチには、導入部分、ディスカッション部分、結論部分があるものだが、山はだいたいディスカッション部分の最後のほうに来るものである。発表者は、この第五段階の作業の参考として、オーラルインタープリテーションというものがあることに触れた。これは、一種の言語音声教育であり、文学作品などを解釈し、その解釈に立脚した読み方をする活動である。

発表者がワークショップ冒頭に述べたことであるが、コーチの仕事の目的はスピーカーがコンテストに出場する際に支援することであるので、その性格上、仕事の目的は英語教育の一般的な理想からズレている面がある。たとえて言えば、英語教育が保健体育に当たるのに対し、スピーチコーチの仕事は競技スポーツの世界の仕事である。コーチの役割について考えるときにはこのズレのことを常に念頭に置くべきであるが、コーチの仕事には、教室の英語教師が行うべき音声指導と重なる要素が多く含まれているので、教室活動にこれらを取り入れる余地は大きいと思われる。

文責:残間 紀美子


2011年度 第4回研究会(講演会)

日 時: 2011年10月15日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 15号館 03教室

“Critical Thinking and Analysis of Argumentative Discourse”

講演者:Prof. Frans van Eemeren[アムステルダム大学名誉教授]

【講師紹介】

バン・イームレン教授は、世界で最も有名な議論学者です。このたびは、来日に合わせて、批判的思考の観点からargumentative discourseを分析するお話が伺えることになりました。アムステルダム大学は、ヨーロッパにおいて、この分野の研究教育で先進的な役割を果たしており、同大学での長い教育経験をお持ちのバン・イームレン先生による講演は、日本で、ディべート、ディスカッションなどの形で批判的思考を英語教育に取り入れている教師にとり、あるいは、そのような方向で英語教育を改善しようと考えている教師にとり、大いに参考になると思われます。また、広く談話分析に関心のある研究者にとり、批判的思考という新たな視点を得る機会になるかも知れません。

【後記】

今回の講演のテーマは「議論の評価」である。ヴァン・イームレン氏は、講演の前半でその理論的枠組みを述べ、後半で、具体的文章にそれを当てはめることによって理論を例示した。前半の内容は次の通り。理論の枠組みは語用論的弁証法の枠組みに基づく。この枠組みの趣旨は、純粋に論理を扱う弁証法に、言葉の使い方の考察を加味するというものである。議論評価の基準設定のために、理想的モデルとして10項目の「批判的ディスカッションのルール」を立てることが出来る。また、議論の段階に着目すると、議論は、対立段階、開始段階、議論段階、終結段階(日本語は仮訳)に分けられる。議論する者は、各段階で、理論的妥当性を維持するだけでなく、自分に有利になるようにレトリックを戦略的に用いる可能性がある。以上が前半の内容。さて、後半では、KLMオランダ航空の報道発表の分析が行われた。同社職員が、輸送出来なくなった動物を、所轄省の指示により大量に処分したが、報道発表は、これに対するコメントである。ヴァン・イームレン氏は、発表が、表面上謝罪文でありながら、戦略的な文章展開によって、会社の責任を最小に見せ、責任を所轄省や当該職員に負わせる効果を持つように作られていることを示した。以上が後半。議論分析は、少なくとも近年は、TALKで取り上げられていないテーマであり、今回の講演はこのような学問分野の存在を認識するよい機会となった。

文責:松坂ヒロシ


2011年度 第5回研究会(修士論文中間発表会)

日 時: 2011年11月19日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 14号館 6階 610教室

研究発表1

発表題目:           Incidental learning: Learning from exposure to teacher talk in a TEFL classroom

発表者: 澤田 翔 氏           [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程1年]

研究発表2

発表者の希望により非公開

研究発表3

発表題目:           Effect of explicit phonetic instruction on EFL learners’ listening comprehension

発表者: 山本 清美 氏       [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程2年]

【研究発表1概要】

澤田 翔 氏

There is a growing recognition in Japan of the importance of teacher talk in the TEFL (Teaching English as a Foreign Language) classroom. In fact, the Japanese Education Ministry’s official guidelines for high school, which will come into effect in 2013, stipulates that ‘the opportunities which students are exposed to English should be substantial and English classes should be conducted mainly in English’ (2009, pp. 115-116).

This presentation investigates whether the grammatical complexity in teacher talk can be transferred to that in learners’ English. In this research, complexity of a sentence shall be measured in terms of the number of layers of embedding in it.

The subjects in this study are 15- and 16-year-old students at a private boy’s high school in Tokyo. They are members of two different classes of English, designated in this study as the experiment group and the control group respectively. Students in the experiment group were exposed to teacher talk with sentences with subclauses embedded in them; students in the control group were exposed to teacher talk with sentences without embedding. In both groups, the amount of time spent for teacher talk was around 15 minutes, distributed over 3 meetings of the class. The complexity in learners’ English was measured by examining their writing: the proportion of the number of sentences with embedding to the number of all the sentences produced was calculated, and the figures thus obtained were used as indications of complexity in learners’ English.

In this presentation, data on learners’ performance obtained through a post-test and a delayed post-test will be analyzed, and discussion will be offered as regards a possible answer to the research question.

【研究発表2概要】

発表者の希望により非公開

【研究発表3概要】

山本 清美 氏

ネイティブスピーカーは物理的な音と音素の関係を記憶として保持している(Field,2008)。そのような知識を持たない第二言語学習者に対して、音の崩れなどの音声学的事実を明示的に指導すれば、学習者に音と音素のルールに気づかせ、短時間でリスニング力を向上させるという仮説を検証するため、高校生を対象に授業の実践及びデータ収集を実施した。

実験群98名、統制群62名を対象にプリテストとして30問のディクテーションテストを実施した。実験群には音の同化など音声学的事実を明示的に指導した後、CDを聞かせディクテーション等の練習を行い、統制群には、音声学的事実については指導せず、実験群の2倍の時間CDを聞かせ、実験群と同様の練習を行った。各15分の授業を4回実施し、最終日にポストテストとしてプリテストと難易度が等しい30問のディクテーションテスト、約2か月半後に、同等の難易度のディクテーションテストを実施した。

実験群と統制群のプリテストとポストテストの得点の推移を比較したところ、2グループの被験者の点数の伸び幅の平均に有意な差があり、実験群の得点の伸びが大きいことがわかった(t=2.917 df=158 p=0.004)。しかし、各グループにおいて、プリテストから2か月半後のテストまでの、そのグループの被験者の伸び幅の平均を調べたところ、両グループの平均の間に有意差はなかった(t=-0.378 df=158 p=0.958 n.s.)。

以上の結果が示唆することは、実験群の指導法の方が、繰り返し聞かせる指導法より、短期的にはリスニング力の向上により効果があること、時間が経過するとその効果は薄れていくことである。


2011年度 第6回研究会(ワークショップ)

日 時: 2011年12月17日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 601教室

「普通教室で使えるデジタル教材作成術」

講師:    下山 幸成 氏 [東洋学園大学]

【概要】

できるだけ時間をかけずに効果的なデジタル教材を作成・活用したいと考えたことはありませんか? そんな方に役立つワークショップをしたいと思います。ぜひ作成してみたいと思うものがある方は事前に下山宛にメールでお知らせください。準備しておきます。

2011年度 第7回研究会

(KLA(元FLTA)との第10回合同セッション)

日 時: 2012年1月22日(日) 14:00~17:15

場 所: 東京大学 駒場キャンパス

18号館4階コラボレーションルーム3

講 演 者:           森田 彰 氏 (TALK) [早稲田大学商学学術院 教授]

発表者1:           北 和丈 氏 (KLA) [新潟青陵大学短期大学部]

発表者2:           高木 亜希子 氏 (TALK) [青山学院大学教育人間科学部]

【講 演 者】森田 彰 氏

【講演題目】英語教育の総体

【講演概要】

経験科学としての英語教育は、この30年に急速に発展してきたが、それに伴って、各研究者の研究の範囲は、少しずつ狭まっているように思える。その一方、私達は常に、外国語としての英語教育の総体をしっかりと把握し、自分がどういった座標で研究を行っているかを明確にしておく必要がある。今回は、英語教育に関わる、学習者、教授者、教材(教具)、教室環境、さらには、教材の出版社などを含め、英語教育の変数を点検し整理してみたい。実は、これを不断に点検する事は、再現性に乏しい教育研究の体系化には不可欠のものであろう。更に、それによって自分の研究成果が、英語教育にどのように貢献できるかも明確化できるように思える。

【発表者1】北 和丈 氏

【発表題目】遊びと本気の交差点―言葉遊びと創作的英作文の可能性

【発表概要】

本発表は、受験勉強を経験してきた日本の大学生を対象に、作家でも詩人でもない一介の日本人英語教師が言葉遊びという概念を軸として展開した創作的英作文授業に関して、その理論的な枠組みと実践法とを論じる。この冒頭の長い一文そのものが戯言としか思われない要素を含んでいることは否めないが、過去四年間の実践研究を経て、発表者はそれが学問的・教育的文脈において戯言ではないということをある程度まで確認することができた。この実践研究の成果をできるだけ多くの方々と共有することを本発表の主たる目標としたい。

【発表者2】高木 亜希子 氏

【発表題目】高校教員及び受験経験者の大学入試に対する認識

【発表概要】

日本の英語教育において、大学入試は避けて通れない課題である。 日本における大学入試に関する研究は実証的なものが主であり、批判的パラダイムの枠組みの中で問題を議論した研究はほとんどなされてない。本研究では、高校英語教員と受験を経験した大学生が、大学入試が高校の英語学習に与える影響についてどのように認識し、大学入試における英語の試験についてどのような態度をもっているかを明らかにした。調査対象者は高校教員31名と英語教育専攻の大学1年生36名であった。記述式質問紙と面接により調査を行い、批判的パラダイムの枠組みで分析と考察を行った。本研究結果に基づき、大学入試に関わる全ての当事者(受験生、高校教員、問題作成者である大学教員、文部科学省など)への示唆を提示することで、今後の大学入試のあり方を考えたい。

【参加者後記】

研究発表1は、その内容が面白いだけでなく、英語教育上、実に示唆的な内容だと思った。振り返って、私の高校生時代に好きな教科にはならなくても先生自身が輝いていた授業は、今でも強い記憶として残っている。理科系であれば実験が、社会系であれば映像が絡んだ場合が、私の場合そうであった。英語教師の話に戻る。私自身の経験として、それはある意味、ことば遊びなのではないのかと思った。しかも、輝くためには教師自身が遊んでいる必要があるのではないかと。なお、ことば遊びには、確かに英作文がよい。学習者が創造しないと英語表現などの定着効率が悪いだろうから。この研究発表では、様々な遊戯的英作文活動が紹介された。しかし、英作文に限らないと思う。ある英語の音声が、日本語ならこのような文に聞こえるといったあそびは、あるテレビ番組の1コーナーにもなっている。教育実践として、ことば遊びのタイプには他にどのようなものがあるのだろうか。

研究発表2を聞いて私は、発表者の内容に対してではなく、批判的パラダイムの枠組みそのものについて、少し違和感を覚えた。批判的パラダイムの対象は、特定の社会変革を起こすことが主な対象だと把握した。ただ、「批判的」であるならば、自己である批判的パラダイムそのものにも向けられるべきかと思った。もしそうなるのであれば、わりとよく聞く、批判的思考(これもまだ人によって捉え方は異なるのだろうが)というものであり、それは、必ずしも体制側に変革を求めるものではない。

講演を聞いて感じたのは、その教材の規模の大きさが大きくなるほど、それぞれの利害関係者の調整に時間と労力がかかるということであった。このことも、教育研究の一面を表していると思うが、私は、チームとしての教育、チームとしての研究という側面を強調してみてはどうかと思った。何も教育・研究に限らず、チームとして成し遂げるにはその調整が必要である。一方、教育、特に英語教育はコミュニケーションを教えている。コミュニケーションの場が現れる一場面がチーム内外で現れるコミュニケーションである。利害調整の面倒をむしろ肯定的に捉えれば、それは日々の教育研究に十分活かせるのではないか。ただし、それはわかりやすい形で出てくるものではないだろうが。

[文責:山口 高嶺]


2011年度 第8回研究会(TALK TIME)

日 時: 2012年3月17日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 16号館 3階 304教室

「中学校と高校の連携を考える」

講師:    高橋 真由美 氏 [千代田区立九段中等教育学校]

【概要】

 新学習指導要領に基づいた教育の展開が目前になりました。各学会が主催する春休みのセミナーでは中高大の連携を考えるテーマが多いように見受けられます。中学校では高校への橋渡しに意識を向けてどのような工夫をされているのでしょうか。また高校では入学してくる生徒のレベルや学習経験の差にどのような意識を向けているでしょうか。新年度を前に改めて中学と高校の連携について皆さんと意見交換をしたいと思い、今回の例会を企画しました。

 当日はまず、優れた実践を重ねてこられている高橋真由美先生に、中高一貫校で6年間を見据えてどのような工夫や指導をし、指導をしているかという観点から話題提供をしていただきます。高橋先生からは、

Can-Doリストを作成と共有

学習者個々の学力と学習習慣の把握

学習者個々に対する学習支援

中学の授業スタイルと大学受験準備への配慮

を中心にご報告いただく予定です。

 後半は参加者全員でのディスカッションです。皆さんそれぞれのお立場から日頃感じている課題や実践例などご披露ください。資料のご持参も大歓迎です。