2017年度 第1回研究会(講演)

日 時: 2017年04月22日(土)17:15~19:15
会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室
参加者: 松坂(ヒ) ┃ 浅利、大石、北野、久保、小林、下山、鈴木(薫)、肥田、溝口、安田、山口
  [敬称略 会員12名、一般参加者0名、計12名]

こころを動かすレトリック 共感のことば説得のことば
講演者: 鈴木 健 氏 [明治大学]
司会者: 松坂 ヒロシ 氏 [早稲田大学]

【概要】
 コミュニケーション研究は、説得の技法を学ぶレトリック批評 (Rhetorical Criticism)、戦後発達した異文化間コミュニケーション論 (Cross-cultural Communication)、近年、脚光を浴びるメディア研究 (Media Studies)を中心として、過去80年間以上にわたって発達してきました。本講演では、コミュニケーションとは何か、コミュニケーションはどこで起こるのかという基本的な問いと同時に、ニューメディア時代、ポスト真実の時代にコミュニケーション研究の使命は何かという問いも扱っていきます。具体的には、バークのレトリック批評、ターナーの社会的物語などに加えて、ユーモア理論、比喩理論などを中心として、私たちの身の回りの問題を題材として考えていきます。

【司会者後記】
 講師は、カンザス大学大学院、ノースウェスタン大学大学院を修了し、コミュニケーション博士を取得されたコミュニケーション学者である。コミュニケーション研究とはどのような学問かを解説して頂けるようお願いして講演依頼をしたところ、次のような話題をカバーするお話をして頂き、コミュニケーション研究の地平の広がりを示して頂くことができた。
コミュニケーションの定義のひとつとして、時間の共有という非常に広い定義が考えられる。というのは、通常の意見交換のみならず対立すらコミュニケーションの範囲に入ると考えられるからである。つまり、没交渉になって初めてコミュニケーションがなくなる、ということになる。
コミュニケーションが起こる場としては、一人一人の心の中という最小の場から、小集団、組織、メディアなどに至る種々のものが考えられ、宇宙とのコミュニケーションも理論的に想定することが可能である。場の広がりや多様性を反映し、コミュニケーション研究は心理学、経営学、国際関係論などを含む学際的研究であると言える。
コミュニケーションは協調行動を導き出し、対立を克服する助けとなる。
電子時代のコミュニケーションにおいては、これまでにも増して言葉に自らの内面を表す機能が付与され、コミュニケーションが、個人化、自己開示の増加、視覚的ドラマ化、といった特徴を帯びてくる。じっくりと時間をかけて論理を展開する、という行為が行われなくなっていることと関係がある可能性がある。
コミュニケーションは、感情的安定、自分の価値の再認識、創造性発揮、力の実感、不滅の願望など、人の秘密の欲求に応える働きをする。
ユーモアの活用がコミュニケーションを促進することがあるが、このことも、優越理論、解消理論、不調和理論など、コミュニケーション理論で説明できる。
 以上のような項目に加え、主要なレトリック戦略、物語の構造の例、哲学的真実であるtruthと科学的調査が確定するfactとレトリック批評的視点から言えるrealitiesの区別、といった話題への言及があり、最後に、レトリック批評の例としてシンデレラの物語をフェミニズム批評のメソッドにより扱うという見方が紹介された。
 外国語教育においては、コミュニケーションという概念が扱われるとき、言葉の第一義的な意味が伝わることが重要視されるため、われわれ外国語教育者・研究者は、こうしたレベルのコミュニケーションこそコミュニケーションのすべてであると思いがちであるが、コミュニケーションは、その心理的、社会的な側面を考えるとき、実はわれわれが日ごろ慣れ親しんでいるものとは守備範囲を相当異にするものとなる。このことを説得力のある形でお話頂いた講演会となった。

[文責:松坂 ヒロシ]


2017年度 第2回研究会(実践報告)

日 時: 2017年05月06日(土)17:15~19:15
会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

長期留学による英語力の向上と日本語での言語生活と自己評価に関する調査
発表者: 澤田 翔 氏 [淑徳中学・高等学校]
司会者: 浅利 庸子 氏 [東京理科大学]

【概要】
 英語圏への留学が英語学習の方法論として期待される中で留学を通し大きく英語力を伸ばす学習者だけではない事が経験的に理解されています。留学を通して英語力を伸ばす学生像の把握に関して発表します。
 まず始めに講演者の勤務校に設置されている1年留学コースにおける留学前後の英語力の向上を概括します。そこにみられる英語力の向上を促進または妨げる要素を特定すべく、留学前の言語生活の質と自己評価をもとに分析を行いました。分析の結果を担任所見から成功のケーススタディを交えて説明します。

 私学を取り巻く背景「入試改革」「学校改革」「募集」という三つの要素と絡めて生徒の学力や必要とされる英語力に合わせた留学前・留学中・留学後の三つの段階別の指導の結果から留学者への指導のあり方を探ります。変数統制を行う純粋な研究ではなく学校現場における取り組みとそのフィードバックとして拝聴していただければと思います。


2017年度 第3回研究会(研究発表)

日 時: 2017年06月24日(土)17:15~19:15
会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

五文型と英文認知
発表者: 柳川 浩三 氏 [法政大学]
司会者: 杉内 光成 氏 [獨協埼玉中学高等学校]

【概要】
 本発表前半では、学習者(大学生)が 1) 五文型をどのように受けとめ、2) どの程度それを理解しているかを報告する。後半では、3) 五文型の理解度が異なる学習者間で熟達度に差があるか、4) 五文型の理解度が異なる学習者間で英文構造のとらえ方はどのように異なるかを検証する。それによって、EFL環境下における高校・大学での文法指導に示唆を提示したい。
 長い間、日本の英語教育で「学校文法の根幹」(池上, 1995, p.21)とすら見なされてきた「文型」という用語が、2014年実施の学習指導要領(高校)からその姿を消した。これは、1958年に五文型が学習指導要領に取り入れられて以来、この約60年間で初めてのことであり、日本の中学・高校の英語教育がコミュニケーション志向へと向かう大きな転換点にあることを象徴している。しかし、コミュニケーション志向の発信型・参加型の授業がEFL学習者の英語力を育てる上で本当に有効なのかという教師の直観的・経験的な疑問は残されたままである (田中 & 木村, 2016)。それよりも、学校英語教育は、それ以後の学習者の自立的な学習を支える基礎としての文法力を培うことを優先すべきであるという主張は根強い。

 本発表では、大学生1000人余りを対象に発表者が2015年~2016年度にかけて行った調査結果を報告し、議論のきっかけとしたい。


2017年度 第4回研究会(実践報告)

日 時: 2017年07月29日(土)17:15~19:15
会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

小学生向け模擬授業の考察
発表者: 松坂 伸彦 氏 [芝中学高等学校]
司会者: 小林 潤子 氏 [神奈川県立横浜南陵高等学校]

【概要】
 中学校の教員による小学生対象の模擬授業について、実際の映像を観ながら考察します。ご紹介する映像の受講生は主に小3~小6の男女です。異なる年齢や英語技能の参加者が対象であるため、授業が(1)誰にでも分かる内容や題材で、(2)誰でも参加できる形態になるよう意識しています。また、学校広報活動の一環であるため、(3)他の学校の授業と比較されてもよい、(4)帰宅後に知識や技能を披露したくなる授業になればと模索しています。今回のTALKでは、本模擬授業の(1)~(4)の側面を中心にお話しし、皆様のご意見を頂けたら嬉しく思います。どうぞよろしくお願いいたします。


2017年度 第5回研究会(講演)

日 時: 2017年09月16日(土)17:15~19:15
会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

Rodoku Storytelling ~My Mission and Passion~
講演者: 青谷 優子 氏 [朗読家・バイリンガルアナウンサー・英語コミュニケーション講師]
司会者: 久保 岳夫 氏 [早稲田実業学校]

【概要】
 英語はかなり勉強しているのに、会話が理解できない→それに対して反応できない→コミュニケーションが成立しない。こういった経験をされる方は多いのではないでしょうか。それは単に単語が聞きとれない、言葉の意味がわからないからなのでしょうか。言語は生き物ですので、その背景には必ず「文化」が存在します。表現は時代によって変わり、コンテクストはその土地の歴史、人々の風習を表すため、たとえすべての単語を聞きとれても理解できないことが多々あります。これを乗り越えるのにはどうしたらよいのでしょうか。
 小中学校時代を英国ロンドンで過ごし、NHKで23年間英語アナウンサーを務 めた講演者は、「伝える・伝わる」ということばの側面に注目し、自身の異文化コミュニケーション体験やアナウンサーとして過ごした経験、また現在朗読家として活動する中での取り組みや気づきなどについて英語でお話しします。講演の終わりには朗読も披露します。

【司会者後記】
 講師は元NHK国際放送の英語アナウンサーで現在はフリーの朗読家、バイリンガルアナウンサーとして活躍している。一線の英語アナウンサーとしての経験や、講師が現在取り組んでいる日本文学の英語での朗読を通して、音声でメッセージを伝える際に重要となる項目についてお話をしていただいた。英語教育の世界で「音読」という言葉を耳にするようになって久しいが、書いてあるものを単に音声化するという意味のreading aloudではなく、活字に命を吹き込む朗読、つまりreading aliveが、現代の日本の英語教師に求められているものなのではないかと述べられた。
 また、物語をうまく朗読するために、重要なこととして3つのポイントを挙げられた。まず、朗読をする際は活字で書かれている内容を立体的に想像しなければならないので、visualizationが重要であると述べられた。次に、文字の上では直接表れないもの(tones / pauses / stresses / expression)を駆使して、想像力をめいっぱい働かせながら朗読する必要があるとしてimaginationが重要な要素として挙げられた。最後に、朗読をする者は物語を完全に理解していないといけないとし、comprehensionの重要性が挙げられた。

 以上の点に加えて、講師自身によるLafcadio HearnのMujinaや夏目漱石のTen Nights of Dreamsの実演朗読も示された。

 一般に、外国語教育において教師が教室で学習者に対して音声のinputを与える時は、あらかじめ録音された教材を再生するか、教師自身がその言語を話したり読み上げたりすることのふた通りが考えられるが、本講演では、特に後者に関してより質の高い音声教材を提供していく必要性が示されたように思う。いわゆる「生きた英語」を学習者に伝えていくためには、英語教師自身もlive performanceにこだわっていく必要があるのかもしれないと考えさせられる講演会となった。

[文責:久保 岳夫]


2017年度 第6回研究会(修士論文中間報告会)

日 時: 2017年10月28日(土)16:30~19:15
会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

司会者: 小林 潤子 氏 [神奈川県立横浜南陵高等学校]

研究発表1
発表題目: The Effectiveness of Shadowing Tasks on Japanese Junior High School Students’ English Production
発表者: 肥田 和樹 氏 [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程1年]

研究発表2
発表題目: Exploring Japanese University Students’ Language Attitudes From the Perspectives of English as a Lingua Franca and World Englishes
発表者: 齋藤 浩一 氏 [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程1年]

研究発表3
発表題目: Teacher Cognition and Pronunciation Pedagogy in Japan
発表者: 杉田 歌織 氏 [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程1年]

研究発表4
発表題目: University Students’ Demotivation and Remotivation Processes of English Learning in a Japanese Context
発表者: 神原 崚介 氏 [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程1年]

研究発表5
発表題目: What Japanese English as Foreign Language Learner’s Willingness To Communicate Looks Like Before Study Abroad
発表者: 鈴木 茉里 氏 [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程1年]


2017年度 第7回研究会(講演)

日 時: 2017年11月11日(土)17:15~19:15
会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

EU(欧州連合)におけるマルチ・リンガリズムの現状と展望:Diversity in Unity
講演者: 中曽根 佐織 氏 [駐日欧州連合代表部調査役]
司会者: 松坂 ヒロシ 氏 [早稲田大学]

【概要】
英国のEU離脱(BREXIT)や日・EU経済連携協定(EPA)大枠合意など、昨今メディアを賑わしているEU(欧州連合)。 そもそもの始まりは、1967年の欧州共同体の創設に遡る。それからちょうど半世紀。これまでの欧州統合の道のりには紆余曲折があり、また今後もさらに前途多難が予想されよう。しかしヨーロッパを統合するという壮大な理念の根底には、「統一性における多様性」というコンセプトが息づいており、その代表的な例が言語政策において見られる。数多くの多言語国家を抱えるEUは、国際連合などとは異質の考え方を取り入れているのである。そこで、EU統合の現状とEUのマルチ・リンガリズムについて、お話させていただきたい。
【講演者略歴】
東京大学教養学科(フランス社会学専攻)卒業。東京大学新聞研究所(現・東京大学大学院情報学環・学際情報学府)を経て、東京大学在学中に、パリ第III大学(ヌベル・ソルボンヌ)コミュニケーション学科に留学。1982年より駐日欧州連合代表部に勤務。現在調査役。山形大学、金沢大学非常勤講師、慶應義塾大学特別招聘助教授、中央大学商学部講師を歴任。著書・共著・論文として「EUの制度と機能」(早稲田大学出版部)、「EUの男女均等政策」(日本評論社)、「世界の社会福祉」(旬報社)、「海外生活情報情報」(東京新聞)など。高円宮杯英語弁論大会理事会審査員。


2017年度 第8回研究会(講演)

日 時: 2017年12月09日(土)17:15~19:15
会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 610教室

Self-Determined Teaching for Self-Determined Learning: Implications for Language Pedagogy in Japan
発表者: W. L. Quint Oga-Baldwin 氏 [早稲田大学]
司会者: 松坂 ヒロシ 氏 [早稲田大学]

【概要】
Many teachers talk about wanting to motivate their students, but are often unclear about what that means. They wish to help their students act in ways that lead toward academic success, though they may lack effective tools to instill these behaviors in their students. Likewise, many students enter school with a large amount of motivation. They are eager to succeed and achieve good grades. However, this motivation sometimes disappears at the first sign of difficulty or competing interests. According to self-determination theory (Deci & Ryan, 1985; Ryan & Deci, 2017), the key is to develop high quality motivation, rather than high quantity motivation. Teachers need to know how to give students the right reasons to learn by providing a caring learning environment, with interesting and enjoyable tasks where they can feel a sense of mastery. By engaging students in tasks at the right level with the right timing, teachers can provide a learning environment that builds the quality of motivation. This lecture will provide teachers with theoretically justified, empirically robust tools for building a climate of engagement and motivation. The presentation will outline the literature on self-determination theory, contextualize this theory within the larger framework of language education, discuss recent findings in the field, and then demonstrate concrete applications for all levels of classroom education.
【講演者略歴】
W. L. Quint Oga-Baldwin has taught in all areas of language education in Japan. He now trains teachers at Waseda University in the School of Education. He earned a Doctor of Philosophy in Education from Hyogo University of Teacher Education, specializing in elementary school foreign language pedagogy and motivation. His research interests include effective classroom teaching methods and motivation and engagement in elementary and secondary schools.

【司会者後記】
 講師をおつとめ下さった早稲田大学教育学部英語英文学科准教授オーガ・ボールドウィン氏は、兵庫教育大学で博士号取得、小中学校、とりわけ小学校における外国語教育、動機づけの専門家である。
 講演は、自己決定理論を概観し、それを外国語教育の文脈に当てはめ、最近の研究成果に触れ、その外国語教育への応用を論ずるものであった。

 冒頭、動機を促進する授業の特徴と動機を低下させる授業の特徴とをできるだけ多く列挙するタスクが課された。前者の範疇の項目としては、熱心な教師、よい雰囲気、同級生との連帯感、クラスサイズ、興味のある授業内容、適度なタスクレベルなどが挙げられ、後者の範疇の項目としては、厳しすぎる授業、方向性の欠如、学習者の間違いの直し過ぎ、低い成績評価、ネガティブな雰囲気などが挙げられた。

 このあと、講師より自己決定理論の概要の説明があり、自己決定理論の5つの下位理論が紹介された。基本的欲求理論、有機的統合理論、認知的評価理論、目標内容理論、因果志向性理論である。このうち最初の3つについて詳細な説明があった。

 基本的心理的欲求には、自立性の欲求、関係性の欲求、有能さの欲求があり、これらが動機づけの要素となる。前述のタスクで列挙された項目については、基本的欲求理論に立脚した分類が試みられた。すなわち、それぞれについて、自立性、関係性、有能さのどれに該当するかが検討された。

 有機的統合理論については、無動機づけから外発的動機づけを経て内発的動機づけに至る連続体の枠組みの説明があった。自律的動機づけが高く統制的動機づけが低いと良質の動機づけにつながり、また、自律的動機づけが高く統制的動機づけも高い場合には多量の動機づけにつながるとのことである。

 認知的評価理論については、因果の所在が報酬などで外発的な方へ振れると内発的動機づけが下がること、有能感が高まると内発的動機づけが高まることなどの命題が紹介された。

 最後に具体的な英語の授業や教師のありかたが論じられた。学習者には自立性が必要であり、日本の学習者の場合は、確実性やルーティーンがプラスの効果を持つようである。ほめ方には段階を設け、また教師が楽しく英語を話すことが重要、とのことであった。

 学習者の意欲を高める工夫をすることの重要性はわれわれすべての英語教師が認識しているが、これを理論的な枠組みで考察する機会を得たことは貴重であった。

[文責:松坂 ヒロシ]


2017年度 第9回研究会
(KLA・TALKの第16回合同セッション)

日 時: 2018年2月10日(土) 14:00~17:15
場 所: 東京大学 駒場キャンパス 18号館4階 コラボレーションルーム3

講 演: 折井 麻美子 氏 (TALK) [早稲田大学教育学部英語英文学科 教授]
発表1: 目黒 沙也香 氏 (KLA) [東京大学大学院総合文化研究科 博士課程]
発表2: 佐々木 彩子 氏 (TALK) [早稲田大学 非常勤講師]

【講 演 者】折井 麻美子 氏
【講演題目】教員研修のための音声教育プラットフォームの構築:発音学習とその指導に関する基礎調査の報告
【講演概要】
 現行および次期学習指導要領では、英語の四技能を統合してバランスよく習得するコミュニケーション能力の育成を目指しており、日本人が苦手とする音声面(発音・会話・聴解能力)の重要性はますます高まっている。英語指導に携わる教員には、高度な英語運用能力と、音声面での適切な指導スキルが求められている。しかし、既存の教員研修は授業力全般や学級運営能力向上のための研修が大半であり、教員自身の発音能力や、音声に関する専門知識と指導スキルの習得を目的とした教員研修はほとんどなく、その整備が急務となっている。
 本研究は、英語指導に携わる現職教員(小・中・高)の発音能力および音声指導力向上を、e-learningを用いた音声教育研修プラットフォームを構築して支援することを目的としている(科研 基盤(B)15H03228)。プラットフォームは、オンデマンドによる理論面の講義、発音ソフト練習と対面ワークショップでの発音トレーニング、ALTとの授業を想定した英会話セミナーを併用して継続的に実施し、合わせてその効果を検証するものである。

 本講演では、まず学習指導要領における発音とその学習に関する指針を確認し、さらに現場における発音指導の状況を概観する。さらに、各校種の教員が、自身の発音や発音指導に対してどのような意識を持っているかを、2013年(夏季研修、杉並区)および2017年(教員免許更新講習、早大)に実施した紙面調査の結果に基づいて報告する。さらに、発音ソフトを用いた研修の有用性と開発上の課題についても、2016年(「英語音声学」授業、早大)と2017年(教員免許更新講習、早大)の調査に基づいて考察する。

【発表者1】目黒 沙也香 氏 (KLA)
【発表題目】「小学校英語教育」は学校現場でどのように捉えられているか:公立小学校における事例の紹介
【発表概要】
 日本の公立小学校における英語教育導入の是非、またその理念や目的、方法などの方向性をめぐってはさまざまな意見が示されてきた。平成29年3月に次期小学校学習指導要領が公示され、中学年には外国語活動、高学年にはいよいよ教科としての「外国語」を行う方針が示された。本研究は、公立小学校の教員や児童が小学校での英語教育に対してどのような認識を持っているか、また英語の導入が他教科の授業数や1日のタイムスケジュール、教員の業務等、小学校全体の営みにどのような影響を与えているかを明らかにすることを目的とし、事例として関東圏内のZ市にある3つの公立小学校を対象に調査を行なっている。本発表では、教師が小学校の英語の授業に対してどのように感じているかについて焦点を当てたい。
【発表者2】佐々木 彩子 氏 (TALK)
【発表題目】英語の文強勢:ピッチ変動と長さ
【発表概要】
 昨年出版した専門書 Acquiring English Sentence Stress: Pitch and Musical Sensitivity と、その後の研究について発表させていただきたい。
新しいピッチ曲線の開発
英語のピッチ変動を英語学習者に視覚的に指導するために、英語母語話者と英語学習者のピッチ変動を視覚的に比較できる新しいピッチ曲線を開発した。
文強勢の知覚におけるピッチ変動の役割
1955年のFryによる語強勢に関する実験以降、単語レベルの強勢の研究は多く行われたが、文レベルの研究はあまり行われていなかった。文レベルの強勢におけるピッチの影響をアメリカ英語母語話者 40人、イギリス英語母語話者 36人、日本人英語学習者 116人で調べ、ピッチ変動が文強勢を知覚する1つの要因であることを明らかにした。
英語と音楽の関係
音楽は数学(時空間的論理能力)を向上させるという研究があるが (Rauscher, et al., 1997)、音楽と言語の関係についての研究 (Patel, 2008) はあまり多くない。音楽の知覚(音楽能力)と英語の文強勢の知覚(言語知覚)に関係があるかどうかを日本人英語学習者 81人と150人で調べた。
文強勢の知覚におけるピッチと長さの役割
文強勢の知覚における長さとピッチの役割を41人の英語母語話者で調べ、文強勢の知覚においてピッチ変動と長さが大切な要素であることを確認した。