2012年度 第1回研究会(講演&TALK TIME)

日 時: 2012年4月21日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 10階 1046共同研究室

「日本人英語教師が教えられることについて考える」

発表者: 大石 文雄 氏 [法政大学・埼玉県立浦和商業高等学校 非常勤講師 元 埼玉県立浦和第一女子高等学校 教諭]

司会者: 鈴木 久実 氏 [東京都立戸山高等学校]

【概要】

 公立中学校で9年、中堅の県立高校で11年、進学校と言われる県立高校で16年、計36年間の英語教師をした「普通の英語教師」が退職を迎えて考えていることを以下の3点を中心に話したいと思います。

英語教師としての36年間を振り返る。

non-native speaker of English である日本人英語教師が教えられることは何なのか。

日本人英語教師が教えられるものがあるとしたら,それをどのように教えていくのか。

2と3については参加者の皆さんとディスカッションしていきたいと思います。

【後記】

 今年度第1回目のTALKは、この3月に埼玉県の高校教諭を退職された大石文雄氏の36年間の教員生活を振り返りながら、英語教育を再考するという有意義な会であった。

 大石氏は9年間、横浜の公立中学校に勤めたあと、埼玉県の高校に26年間勤務した。若い頃の中学での教員生活は、校内暴力の嵐が吹き荒れる中、若く有望な生活指導担当の教師として活躍されたようだ。また、この時期中学校で英語週3時間体制が始まり、日本の英語教育が大きな変化を向かえた時代でもあった。

 埼玉県にうつり、中堅校での教員生活では、受験校の生徒に英語を学ぶきっかけを与えつつ、早稲田大学の専攻科に通っていた頃の大石氏の思い出を聞くことができた。現職の教員が、上からの押しつけでなく、自分から学ぶことができる場の大切さ、教員研修のあり方をあらためて考えさせられた。

 退職までの16年間、進学校に勤務し、ライティングの指導に苦労された話しが非常に印象的だった。日本人の英語教師が、ネイティブスピーカーの助けを借りずに、英作文の指導がどこまでできるのか、考えさせられた。

 後半のディスカッションでは、non-native speaker of Englishである日本人英語教師が教えられることは何であるのか、日本人の英語教師が教えられるものがあるとしたら、それをどのように教えていくのか、ということで意見交換をした。

 大石氏からは、自分がある程度自信を持って教えることができるものは、4技能のうち、リーディングの解釈とリスニングだろうということだった。リスニングに関しては、日本人英語学習者が躓きやすい、音の崩れなどについて、ポイントを指摘することができるということだった。参加者からは、文法が軽視される傾向があるが、文法指導は大切であるという意見、授業だけで英語の習得には足りず、自分で多くの時間をかけて勉強しなければならないのだから、授業の中で英語を好きになるきっかけが与えられればよいという意見、また、ALTを日本人教師がうまくコントロールすることが大切であるといった意見が出された。

 日本の英語教育は、常に結果を求められ、外部からの圧力により振り回されがちであるが、今回の例会で話したことは、日本における英語教育の根本について再考するよい機会であった。我々が英語学習者のために何ができるのか、何をすべきなのか、地に足をつけてきちんと考えてみたい。

[文責:鈴木 久実]


2012年度 第2回研究会(実践報告)

日 時: 2012年5月26日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 5階 505教室

「Facebookを使ったプロジェクト型国際協働学習」

発表者: 望月 真帆 氏 [早稲田大学本庄高等学院]

司会者: 杉内 光成 氏 [早稲田大学大学院教育学研究科修士1年]

【概要】

昨年度取り組んだ実践研究*についてご報告します。

勤務校の有志生徒と交流校であるインドネシアの高校生が、2冊の英語の「フリーペーパー」を作りました。8月に対面する機会はありましたが、編集作業上のやりとりはすべてFacebookとemailによるものです。今回の報告の前半ではこのプロジェクトのデザインと経過をご紹介します。また後半ではFacebookの過去ログにみられる生徒の英語表現、特に依頼に関わる表現の使用について概観し、教員からの今後の学習支援の仕方について考察します。

(両校生徒が毎年参加しているWorld Youth Meetingというイベントで、1冊目を作った経験から学んだことを10分のプレゼンテーションにして発表しました。下記サイトでご覧いただけます。)

http://www.n-fukushi.ac.jp/ondemand/WYM2011/contents/WYM2011_0808_02/Player.html

*パナソニック教育財団第37回実践研究助成(一般の部)対象

【後記】

5月のTALKは早稲田大学本庄高等学院(以下学院)の望月美帆教諭による実践研究の発表であった。

前半は実践研究の概要・目的・成果・課題について、写真やビデオクリップを交えながら発表された。後半は実践研究を通して浮き彫りになった課題や教員からの学習支援の仕方などについて参加者との質疑応答を交えながら進められた。

この実践研究はFacebookを使ったプロジェクト型国際協働学習で、学院で以前から行われているものである。学院の有志生徒とインドネシアの交流校の生徒が、Facebookとemailとのやり取りを通じて2冊の英語の「フリーペーパー」を作成するプロジェクトなのだが、その背後にある目的として望月教諭は以下の3点を挙げられた。

英語を使って何かを創造する機会の提供

交流校の生徒と対等な立場での協働学習の経験

生徒の自立したプロジェクトマネジメント力の育成

このプロジェクトでは「フリーペーパー」を作る事になっているが、その理由として、生徒のフリーペーパーに対する関心が高い、メディアとしての特徴を生かせる、編集作業を通して教育効果が期待できる、他者に向けて書くことへの意識を育成できる、そして音声言語を活用できることを挙げられた。

4月から3月までの1年間を2phases(4~7月、8月前半~3月)に分けて行われ、英語のフリーペーパーNo.1, 2を作成し、World Youth Meeting 2011において協働発表を行い、英語でやり取りをする意欲の向上や、協働企画を推進するためのグループスキルの習得、そして雑誌というメディアへの理解を深めることができたことが成果として挙げられた。しかし同時に課題として、Facebook上での英語のやり取りに対する教員のフィードバックの方法とそのタイミング(例:生徒がFacebookでやり取りをしているのを見ている時のフィードバックをするタイミング)が挙げられた。

後半は実践研究全体やその課題に関することを中心にして、活発な意見交換が行われた。議論されたトピックとして以下のものが挙げられる。

学院におけるプロジェクトの位置付けをどう更に良くしていくか

→部活動のように組織化できたら理想

学院の生徒の英語表現をどのように向上させるか

→交流校の生徒や日本人同士(先輩・後輩)での学び合い、「英語表現集」のようなも のを配布など

生徒間の英語でのやり取りの際に気を配るべきはAccuracyかFluencyか

→生徒はAccuracyへの関心が高い、Accuracyを向上させてFluencyの指導へ

Facebookという全世界で使われているコミュニケーションツールを使った実践研究を通して、英語教育について考えることのできた大変有意義な2時間であった。

[文責:杉内 光成]


2012年度 第3回研究会(講演)

日 時: 2012年7月28日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 12号館 4階 401教室

「教育現場での英語テスト~より妥当性の高い英語テストの実践を目指して~」

発表者: 澤木 泰代 氏  [早稲田大学教育・総合科学学術院]

司会者: 残間 紀美子 氏 [東京都立富士高等学校]

【概要】

英語教育現場においては、教師自らが様々な目的でテストを作成する機会が多い。これらのテストが指導・評価目標や受験者である英語学習者の特性に合ったものであるかどうかによって、テストの妥当性は大きく左右される。本セッションでは、学習者の言語能力について有用な情報が得られるテスト、また望ましい波及効果をもたらすテストを教育現場で作成・実施していくうえで核となる言語テストの基本を2部構成で検討する。前半では、高校入試と教室で英語指導の一貫として行う小テスト・定期テストを例に取り、テスト妥当性の概念、相対評価と絶対評価の違い、テスト作成・実施・評価のプロセスにおけるテスト細目表の活用などについて解説する。後半はディスカッション形式を取り、これらの点に関する参加者の質問や経験、また日頃教育現場で出くわす言語テストに関する疑問等について自由に話し合う機会としたい。

2012年度 第4回研究会(研究発表)

日 時: 2012年9月29日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 613教室(PC教室)

「ICTを利用した英語音声変化の指導」

発表者: 湯舟 英一 氏 [東洋大学]

司会者: 山口 高嶺 氏 [早稲田大学]

【概要】

英語音声変化に慣れる訓練を通して、リスニング能力向上につなげる実践例を紹介します。具体的には、自作e-learning TOEIC教材を利用した実践例とその学習効果、YouTube等の映像を利用した指導、映画検索サイトを利用した指導、TTS(Text-To-Speech)ソフトを使った学習法など、ICTを利活用した実践例を話題提供した後、参加者の皆さんとより良い指導法や問題点について具体的に議論したいと思います。

【後記】

まず、発表者の今年作成した教材紹介とその背景が紹介された。この教材は、書籍形態(湯舟英一、Ben Benfield 著 Bottom Up Listening for the TOEIC Test 成美堂 2012年)http://daieikyo.jp/aetp/modules/bmc/detail.php?book_id=25195&prev=texts とweb形態の2つがあり、web形態に関しては、http://www.phonicsmedialab.org/TOEIC/ ですぐに試すことができる。この教材の背景としては、ネオボトムアップリスニング、すなわち、特定の音声変化(短縮形、融合同化、無開放破裂音、連結)を含む音声チャンクとその意味の結びつきを強化するアプローチで、例えば、TOEICのリスニングセクションの前半部分の得点力強化になると確信した。実際にこの教材を使用して得られた英語力の伸びを測定したものとして、ディクテーション力が、TOEIC300程度の日本人学生の場合、統計的有意に上昇したとの報告も行われた。ある特定の音声変化を集中的に学ぶことができる、発表者がこれまで選び抜いた英語の歌を集めたものも紹介され、学習者の英語リスニング学習の動機付けに大いに貢献するのではないかと感じた。

第2部では、映画で英会話/英語 映像コーパス(Word Audio-Visual Corpus of Spoken English through Movies)であるSeleaf http://www.mintap.com/ と、Text to Speech技術(TTS)の中で現在最も優れていると考えられるものとして、GlobalvoiceEnglish http://voicetext.jp/gv/pro_gve.html が紹介された。なお、Seleafは無料で使える部分が多く、http://mintap.kir.jp/public/ns/h3/seleaf-utube.html にて、動画像の形態で特徴が確認できる。

全体に対する感想として、音声に注意を向けるために、単に音声を聴かせるのではなく、特定の音声変化を組み込んだ良質な教材を発表者が中心となって開発されたものや、学習者にも教員にも開かれた動画像利用が、単なる一時的流行ではなく、確実に英語教育の質を高める道具になっていると私も強く感じた。

[文責:山口 高嶺]


2012年度 第5回研究会(講演)

日 時: 2012年10月13日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 15号館 03教室

「Critical Thinking and Debate Education」

発表者: Thomas A. Hollihan 氏 [南カリフォルニア大学教授]

司会者: 松坂 ヒロシ 氏     [早稲田大学]

【概要】

トーマス・ホリハン先生は、ネブラスカ大学でコミュニケーション学博士号(PhD)を取得後、南カリフォルニア大学(USC)アネンバーグ・コミュニケーション学部教授を務めておられます。主著書には、Uncivil Wars、Argument and Arguingなどがあり、ご専門分野は、ディベート教育、政治コミュニケーション、レトリック批評です。また、Quarterly Journal of Speech, Argumentation & Advocacyなどの学術誌にこれまで数多くの論文が掲載されています。これまで、ウエィン州立大学、ネブラスカ大学、USC等で、ディベート・コーチを務めており、元全米ディベート学会(AFA)会長でもあります。これまで数回の来日経験のある親日家でもあり、過去に日米交歓ディベートツアーのコーチも務めております。さらに、数多くの政治家や経営者のコンサルタントを務めており、選挙キャンペーンに関するテレビ出演も多い実践的コミュニケーションの権威でもあります。

今回は、批判的思考とディベート教育というテーマでお話し頂きます。これまで、英語力は、知識の面では語彙や文法知識で測定され、運用力の面では発音、プロソディー、流暢さ、総合的リスニング力、総合的読解力などで測定されてきました。また、英語教育は、一般に、こうした基準に照らして実力のある学習者を育てるべく行われています。しかし、日本の英語学習者が英語を現実にどう使うかということを考えるとき、「議論」や「交渉」が使用目的として無視できない項目として存在しており、こうした面の英語力にさほど光が当てられていない現状は改善されるべきでしょう。議論や交渉を可能にする思考能力、一般に「批判的思考」と呼ばれている能力を、英語教育のワク内でどう扱い、どう伸ばすかを、今後の英語教育のひとつの大事なテーマにしていかなくてはなりません。ホリハン先生のお話しは、こうした課題を持つわれわれ英語教育関係者に大きな示唆をあたえてくれるものと思います。(松坂記)

http://annenberg.usc.edu/Faculty/Communication%20and%20Journalism/HollihanT.aspx

【後記】

講師トーマス・A・ホリハン(Thomas A. Hollihan)先生は、南カリフォルニア大学アネンバーグ・コミュニケーション学部教授で、ご専門分野は、ディベート教育、政治コミュニケーション、レトリック批評である。今回の講演は、大きく分けて、4つのトピックをカバーしたと言える。

第一に、人間がコミュニケーションをするとき、必ず、伝達内容が“story”(または“narrative”とも)なるもののワクに入る、という見方が紹介された。たとえば、貧しい人々を話題にするときに、貧しい人について、その貧しいという事実を、批判的な観点、同情的な観点の両方から扱うことが出来る。

第二のポイントは、コミュニケーションの内容を、その背後のストーリーを分析することにより評価することができる、というものである。たとえば、原発の事故についての説明を分析すると、場合によっては、東京電力の責任を出来るだけ小さく見せるストーリーを見てとることができる。

第三に、人がものを主張するとき、その主張が成り立つのに絶対成り立たなくてはならないいくつかの論点(“stock issues”)について説明があった。(1)現状の問題点、(2)その原因、(3)解決策、(4)広い意味におけるコスト、といった論点がそれである。

第四に、実際に何かの主張を展開するときには、単にstock issuesを並べるだけでは不十分であり、聞き手の望む利益を考慮し、論題について十分なリサーチを行い、聞き手と自分との間の意見の相違点を確認し、有効な反論を行う必要がある、という指摘があった。

ホリハン先生のお話は、コミュニケーションの研究者としてのお話であったが、われわれ英語教育にたずさわる者には、先生がお話下さった知見を英語教育にいかに役立てることが出来るかを考える責任がある。たとえば、自分に有利なstoryを構築したい学習者はどんな英語表現を知っているとよいか、という疑問に対して、答えをさがしておくとよいのではないだろうか。われわれ英語教師は、普段、コミュニケーションを教えていて、英語そのものにだけ焦点を当てがちだが、コミュニケーションの底流にある「話者の意図」について考えさせてくれた講演であったと思う。

[文責:松坂 ヒロシ]


2012年度 第6回研究会(修士論文中間発表会)

日 時: 2012年11月17日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 14号館 6階 609教室

司会者: 小林 潤子 氏 [神奈川県立横浜南陵高等学校]

研究発表1

発表題目:           Effect of Explicit Phonetic Instruction on EFL Learners’ Listening Comprehension

発表者: 山本 清美 氏       [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程3年]

研究発表2

発表題目:           教師発話を通した英文複雑性の習得

発表者: 澤田 翔 氏           [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程2年]

研究発表3

発表題目:           The Effect of Segment- and Suprasegmental-Focused Teaching Methods

発表者: 杉内 光成 氏       [早稲田大学大学院教育学研究科修士課程1年]

【研究発表1概要】

山本 清美 氏

This research investigates the effect of explicit phonetic information on EFL learners’ listening comprehension.

Novice EFL learners often fail to process the phonology of the input in connected English speech in the real world. Although there are many factors which cause troubles to EFL learners, one of the most damaging causes is the difficulty that they have in decoding the phonology of the input. Native speakers possess a variety of phonemes from citation form to maximally casual form as memories (Laver, 1994). However, novice listeners do not posses the variety of phonemes as their memories. For novice listeners, it can be helpful to obtain phonetic information such as assimilation, elision, and weak forms explicitly in order to decode the phonology of the input in spoken English.

In the main study, which is a quasi-experimental study, the subjects were 160 high school students in Tokyo. They were divided into two groups: three intact classes as an experimental group and two intact classes as a control group. After a pre-test, four treatment sessions were conducted in both groups respectively. The experimental group underwent phonetic instruction before listening exercises such as dictation and comprehension exercises. The control group did not undergo phonetic instruction. The members of this latter group listened to a sound recording and did listening exercise for the entire lesson. Therefore, they listened to the recording twice as many times as the experimental group. Soon after the treatment sessions, an immediate post-test was carried out, and a delayed post-test was carried out two months and half after the immediate post-test.

The results suggest that explicit phonetic instruction can be more effective than repeated listening in the short term, but that its effect is not retained in the long term.

【研究発表2概要】

澤田 翔 氏

本発表では教師発話の文章構造の複雑性が、教師発話を理解することを通して学習者の英語に転移するかどうかの報告を行う。複雑性とは文章の中の従属節の埋め込み回数とする。

被験者には従属節が既習の高校生を選び、彼らをA,B,Cの3グループに分けた。Aには毎回従属節を伴う文が5~10回含まれる教師発話を行い、Bには従属節を使わない教師発話を行い、Cには教師発話は行わなかった。A,Bともに約5分の教師発話を約1ヶ月半の期間、週に1、2回計16回(計約80分)行い、各回の教師発話は両群とも同じトピックで行った。

学習者の英語力の測定のために自由英作文を事前、中間、事後テストとして使用した。各テーマによる難易度の差はCを使って検証した。辞書の使用は禁止し、綴りの正確さは気にせず適宜日本語の使用を認め好きなだけ書きなさいという指示を与えた。

データ分析には各生徒の従属節の使用回数を各生徒の総語数で割り、各群の平均語数をかけた数値を算出し、この数値を複雑性の指標として用いた。事前、事後テストについてそれぞれその数値を算出し、事後テストの数値から事前テストの数値を引くことで各生徒の伸びシロを求めてAの伸びとBの伸びの平均を t 検定で比較した。統計的に有意な差はみられなかった。(p = .47)

生徒に“教科書の英文を理解することに比べて先生の英語を理解することはどうでしたか?”というアンケートを行い5段階評価で答えてもらったところ、結果はAの方がBよりも教師発話を簡単と答えており、その差は(p = .0505)と有意傾向が見られた。このことに関して、生徒のコメント欄から解釈できることは、教師発話の特徴であるpauseが節の前で置かれていたがために文章理解が促進されたということである。さらに天井効果の可能性を考慮し平均の2倍以上の数値をもつ生徒を除いて t 検定で比較すると統計的に有意な差が現れた。(p = .007) 以上のことから、十分な結果は得られなかったが、教師発話による学習の効果が示唆された。

【研究発表3概要】

杉内 光成 氏

This study aims to analyze the relation between the comprehensibility of Japanese leaners’ English pronunciation and segment- and supra segmental-focused teaching methods used for their phonetic training.

In this study, ‘comprehensibility’ means “perceived ease of understanding” as the term is defined by Venkatagiri and Levis (2007, p.263) on the basis of an earlier definition in Munro and Derwing (1995). Some studies suggested that suprasegmental-focused pronunciation teaching has an impact on the comprehensibility of learners’ output. In Derwing, Munro, and Wiebe (1998), it was revealed that only pronunciation teaching that was based on suprasegmental features affected the comprehensibility of learners’ production as far as narrative reading was concerned. On the other hand, Elliot (1997) found that significant improvements result from segmental instruction for English speaking learners of Spanish. In addition, Sugiuchi (2012) showed, if with marginal significance, a segment-focused method was more effective, on the basis of data from high-school-students’ oral production.

While these studies treated multiple phonetic items simultaneously, the present study focuses on how the performance on individual items affects overall comprehensibility. The data used for this study are those obtained from 48 students, of whom 21 belonged to a segment-focused class and 27 a suprasegmental-focused class, at a high school in Japan. Each treatment session in each class lasted for about ten minutes. The total number of treatment sessions in each class was 13. Before and after the treatment, students took a pretest and a posttest respectively. For these tests, the students read 15 sentences aloud and recorded their own pronunciation. Their pronunciation was assessed both on overall effect and on individual items to see whether or not the items the students had learned were produced properly in their oral production.


2012年度 第7回研究会(TALK TIME)

日 時: 2012年12月15日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 14号館 6階 609教室

2013年4月新学習指導要領改訂のもとで高校でどのような授業を実践するのか?

司会者: 山口 高領 氏     [早稲田大学]

【概要】

12月のTALKはTALK TIMEとして、2013年から実施される新学習指導要領に基づいた授業実践案について意見を交換する場を提供したいと思います。教科書執筆に関係のある先生方のメイン回答者を中心に、今後の授業実践に関わるご質問にお答えいただいたり、全体でディスカッションをしたいと思います。

ただいま以下のような質問を考えております。他に「こんな質問に関心がある」ことがあればお寄せいただければと思います。

【質問】

語彙が、1300語から1800語に増えることになりましたが、この500語の増加が、指導に影響を与えるか、また与えるとしたらどのような影響があるか? レベルの違う学校や教科書で差がありうるか?

コミュニケーション英語では、4技能統合がうたわれているが、授業で展開する際に、どのように展開するか?レベルの違う学校で異なる4技能統合の展開の仕方が考えられるか?

コミュニケーション英語の授業では、旧課程で使用した教材、エクササイズなどは使えるか?

4技能統合のエクササイズ等を評価するときに、 今現在の高校での観点は、「コミュニケーションへの関心・意欲・態度」「外国語表現の能力」「外国語理解の能力」「言語や文化についての知識・理解」です。統合スキルとこの評価の観点はどのように結びつくか?

大学入試に4技能統合の問題が出されるとしたら、どの様な質問や解答方法が考えられるか?

メイン回答者だけではなく、出席者の皆様にも実際の教科書や教材をお持ちいただいて 活発な意見交換ができればと思います。


2012年度 第8回研究会

(KLA(元FLTA)との第11回合同セッション)

日 時: 2013年1月20日(日) 14:00~17:15

場 所: 早稲田大学 早稲田キャンパス 22号館 203教室

講 演 者:           藤尾 美佐 氏 (KLA) [東洋大学]

発表者1:           柳川 浩三 氏 (TALK) [法政大学]

発表者2:           エイミー・ミルズ 氏 (KLA)

[東京大学大学院総合文化研究科言語情報科学専攻修士課程2年]

司会者: 佐藤 之美 氏 (TALK) [東京都立駒場高等学校]

【講 演 者】藤尾 美佐 氏

【講演題目】PhDのその先:研究から実践へ ─コミュニケーション方略研究の

          ビジネス・コミュニケーションへの応用─

【講演概要】

 英語がリンガフランカとなり、英語学習者から英語使用者となることが求められる現在、言語能力だけでなく、自分の、そして対話者の持つあらゆるリソースを文脈の中で生かしていく方略的能力は、これまで以上に求められる能力となっている。

 本講演では、Fujio (2011)で発表した方略的能力(コミュニケーション方略)に関する長期調査をもとに、コミュニケーションにおける方略的能力の役割、会話を維持・促進するためのコミュニケーション方略、コミュニケーションの成否とは何なのかについて、議論を展開する。

 さらに、学術研究と実践の融合について、異文化間のビジネス場面での実例データを示しながら、こうした方略的能力が、実際のビジネスの場でどのように駆使されているのか、また、学術研究がいかに実際のコミュニケーションに貢献できるのかについての可能性を考察する。

Fujio, M. (2011). Communication Strategies in Action: The Negotiation, Establishment, and Confirmation of Common Ground. Tokyo: Seibido.

【参加者後記】

 藤尾氏は方略的能力に関して、1)共有基盤の確立、確認、交渉のために、母語話者および非母語話者がどのようなCommunication Strategy(以下CS)を使用するのか、またCS使用にどのような類似点および相違点があるのか、2)非母語話者のCS使用には長期的な変化が見られるのか?それは、言語能力の向上やコミュニケーション経験とどのように関連するものなのか、という2つの疑問に対し、イギリスに滞在している日本人3名を1年間追うことで、長期的調査を行った。

 調査の結果、母語話者、非母語話者ともに問題点を明確に表すような方略を使用していたということが分かった。しかし、母語話者は短い言葉で反応するCSとより積極的に対話に絡むCSが多く使用され、表現が豊富であったのに対し、非母語話者はCSの量は多くてもパターン化された表現のみを使用していた。この傾向は長期的に見ても変化しなかった。

 母語話者と非母語話者のCS使用についての結果に対し、藤尾氏は会話における役割の固定化の影響や、非母語話者のCSに対するawarenessの低さを考えられうる理由として挙げた。さらに非母語話者のCS使用に大きな変化が見られなかったことに対し、言語能力に変化がなかったことやトピックの影響、L1によるコミュニケーション・スタイルの影響などが関係しているのではないかと分析した。

 藤尾氏は今後の研究課題として、ビジネス場面でのCS使用、職種や専門分野の違う人々のコミュニケーションでのCS使用、またアジア人同士など非母語話者同士のコミュニケーションでのCS使用などを調査していくことを挙げ、さらに方略的能力の実態に迫っていきたいと抱負を述べた。

 われわれ英語教育に携わるものとして、今回の講演で得られた結果を、どのようにして実際の教育現場に還元していくことが重要となってくる。例えば、たどたどしい英語を使用しても会話が成り立っている例を生徒に提示することでCSへ意識を向けさせたり、会話の練習にCSを使う場面を設定するような工夫を考えていく必要がある。方略的能力について深く考えさせられた講演であった。

[文責:杉内 光成]

【発表者1】柳川 浩三 氏

【発表題目】大学入試センター英語リスニング試験はもっとreal-lifeに

          なれるか:高校の先生と生徒はどう思っているのか

【発表概要】

 本発表は以下の二つの問題意識からスタートしている。第一の疑問は、大学入試センター英語リスニング試験(以下、センターリスニング試験)はreal-lifeなリスニング力を問うているか、である。たしかに、センターリスニング試験は学習指導要領範囲内の到達度テストである。しかし、その制約の中であってさえも、受験者のreal-lifeなリスニング能力を問うていなければ、テストとしての有用性や価値は低いと言わねばならない。なぜなら、テスト結果に基づく意志決定(選別や合否を含む)が根拠のないものになるだけでなく、センターリスニング試験導入そのものの波及効果も最小限に止まってしまう恐れがあるからである。

 第二の疑問は、様々な制約の中で、では、どのようにしてセンターリスニング試験をreal-lifeに近づけることができるのか、という現実的な課題である。

 この二つの疑問に少しでも答えうるべく、real-lifeなリスニングを構成する音声的要因を文献研究より抽出し、3カ年分(2007年度~2009年度実施)のセンターリスニング試験について専門家による分析を行ってもらった。そして、センターリスニング試験をreal-lifeに近づけることが必要だと思われる、またはそれが可能な8つの音声的要因を選び、それらをセンターリスニング試験に導入することの可否について、高校教師と高校3年生にグループインタビューとアンケート調査を行った。インタビュー分析からは、彼らの導入可否の判断基準が伺え、ラッシュモデルを使ったアンケート分析からは導入実現可能な要因が特定された。センターリスニング試験をreal-lifeに近づけるための、音声的側面からの実行可能な示唆が得られた。

【参加者後記】

 今回の発表は博士論文の研究の中の一部であり、データを含めて発表された。この研究は「大学入試センター英語リスニング試験はreal-lifeなリスニング力を問うているか」という疑問と、「どのようにしてセンターリスニング試験をreal-lifeに近づけることができるのか」という課題からスタートしている。このテストをreal-lifeに近づけることによりlearnerやtest-takerではなく、language userとして受けることができるのではないか、ということである。

 今回はセンターリスニングテストの音声面だけに絞って発表された。Real-lifeの側面として挙げたのは、1) 自然な速さ、2) Reduced forms (同化・弱音・弱化・脱落など)、3) 言いよどみ(言い直し)やフィラー (well, I mean, you know, etc.)、4) 米語以外の標準的アクセント、5) 非英語母語話者の話す英語、6) 会話の重なり、であった。Preliminary Studyとして2人の専門家と発表者による過去3年分(2007-2009)のセンターリスニングテストによると3) 言いよどみが不十分であることがわかった。

 次に、高校生と英語教師へのグループインタビューとアンケートを行い、結果を分析した。現場の生徒や教師を対象にしたのは、指導要領や教科書が高校生の学習実態を必ずしも反映していない恐れがあること、そしてテスト結果解釈の妥当性はテスト受験者やテスト使用者の判断が重要であるため (Bachman and Palmer, 2010)である。グループインタビューの結果は、教師も生徒も現行のリスニング試験のあり方を支持しており、試験をreal-lifeにすることに消極的であった。理由の一つとして受験者の熟達度と指導(教科書)との整合性を優先すべきということが挙げられた。

 大規模アンケート(教師110名、高校生389名)では以下のような質問項目について 「とてもそう思う」から「まったくそう思わない」まで5段階で答えてもらうといった 方法がとられた。質問項目は以下の通りである。1) 放送される回数を1回にすべきである、2) 英語のスピードを実際と同じ速さにすべきである、3) アメリカ英語以外の英語圏の英語を含めるべきである、4) 英語を母国語としていない人が話す英語を含めるべきである、5) 3人以上の会話を含めるべきである、6) 言いよどみやいい間違いも取り入れるべきである、7) 同化や脱落のような音変化を取り入れるべきである、8) 会話の重なり(overlapping)を取り入れるべきである。

 上記のアンケートでも結果としては概ね教師も生徒も現行のリスニングテストにreal-lifeの要素を導入することに否定的であった。しかしながら上記の項目の中で7)のreduced formsを導入することについて教師の78%、生徒の28%が支持していた。Would youやnext station, did youなど身近な例が受け入れられたようである。

 センターリスニング試験への示唆として、reduced formsをもっと取り入れる、米語以外のアクセント導入の検討、他のreal-lifeの要素の現状維持、などが述べられた。また配点を現行の50点から80点くらいに上げてmotivationを上げて重要視している姿勢を示したらどうか、という言葉で発表を終えた。発表当日がちょうどセンター試験の日の発表ということでタイムリーな内容であり、その後の質疑応答も活発にやり取りされ、とても有意義な発表であった。

[文責:佐藤 之美]

【発表者2】エイミー・ミルズ 氏

【発表題目】L1 Use in Team Teaching Practices in Japanese Elementary

          Schools

【発表概要】

 As of 2011, students in the fifth and sixth grades all across Japan must take part in English education in one way or another. Most classes are conducted in a team teaching style, with homeroom teacher (HRT), and an ALT (Assistant Language teacher). Many have applauded this new initiative, but at the same time, this move by The Japanese Ministry of Education, Culture, Sports, Science and Technology (MEXT) has gathered controversy on many levels as well. In addition, although the use of L1 in teaching a foreign language has been a long debated issue in the field of second language acquisition (SLA), at present there is very little research conducted on the language use that occurs in elementary school classrooms. Thus, it is largely unknown as to how much L1 is being used, or not being used.

 This present study is an attempt to discover the use of L1, its purposes, and the factors that affect its use in the elementary school context. By observing and analyzing three different elementary schools over a three-month period, the researcher carefully observed the use of Japanese by both ALTs and HRTs, and conducted interviews to all teachers as well. Results revealed that that school policy and teacher beliefs greatly affect the use of L1; thus there was a large variation among schools in regard to how much L1 was being used. Furthermore, results suggested that L1 was resourceful in achieving MEXT’s goals, which are to familiarize students with foreign languages. Whether it would be effective in junior high or high schools, or whether it actually aids in acquiring English itself, however, is another issue.

【参加者後記】

 ミルズ氏の発表は修士論文で研究した内容であった。現在日本の小学校では5、6年に英語の授業が導入されている。授業形態の多くが担任(HRT)と外国人講師(ALT)によるTeam Teachingである。文部科学省(MEXT)による新学習指導要領(2013年4月より完全実施)では、特に高等学校における英語授業では英語で授業を行うこととしている。しかしながら小学校段階ではそのような規定はなく、それぞれの小学校の教師の考え方などにより、英語授業中のL1使用(日本語)やALTの使い方など様々である。そこで発表者のミルズ氏は3つの小学校を3ヶ月に渡り調査を行った。

 研究の目的は日本の小学校における英語授業でのL1使用とその使用に影響を及ぼしている要因を見つけることである。学校の方針や担当教師の考え方の影響が強いことがわかった。それぞれの学校によりかなり違うことも報告された。

 ミルズ氏はそれぞれの学校における授業を記録する際の決まり事として、言語使用を 1) In English only, 2) Mainly in English, 3) Mixture, 4) Mainly in Japanese, 5) Only in Japanese, 6) othersの6つに分類した。また授業中の発言をQuestion, Direction, Confirmation, Elicitation, Response, Discipline, Explanation, Translation などに分類して記録した。

 結果として授業中の日本語使用の目的は以下の場合に多いことがわかった。ALTの指示をHRTが日本語で説明する、ALTの質問内容がわからない時に児童が日本語で質問し、それにHRTが日本語で質問する、などである。日本語への通訳はHRTが行う場合とALT自身がおこなうケースもあった。日本人教師の役割として、発音の説明や、語彙、文化の違いを説明する、ということが述べられた。

 なぜ各学校における違いが大きいのか。まずTeam Teachingをする際のHRTとALTの関係、特にどちらが中心になるか、対等の立場でやるのか、などの影響が大きいという。また授業中の日本語使用についてはそれぞれの教師の考えにより影響が出たということである。

 結論としてL1使用は学校や教師毎に異なる、L1使用があまり過度でなければ文部科学省の目的達成に役に立つのではないか、L2(英語)だけの授業では児童たちはプレッシャーを感じて英語嫌いを作り後に良い影響を与えないのではないか、ということであった。

 今回は小学校におけるTeam Teachingについての発表であったが、この状況は小学校だけではなく学校、高等学校にも当てはまる部分も多い。ALTはただのテープレコーダー代わりではもったいないし人間の教師に対して失礼であろう。やはり人間同士がチームを組んで教えるのでよく話し合い、お互いの能力や個性が授業に発揮できる環境を作ることができれば良いと感じた。

[文責:佐藤 之美]


2012年度 第9回研究会(実践報告)

日 時: 2013年3月23日(土)17:15~19:15

会 場: 早稲田大学 早稲田キャンパス 22号館 5階 502教室

「学習者に応じた単語集の作成とその活用法」

発表者: 下山 幸成 氏  [東洋学園大学]

司会者: 小屋 多恵子 氏 [法政大学]

【概要】

 勤務校で独自の単語集を作成しました。その作成過程から活用方法までを実践報告としてお話いたします。まず、語彙選択→例文作成→編集→出版→配付までの流れと、その単語集の授業外利用のために補助教材として作成したウェッブサイトや教材を紹介します。次に、実際に行っているマルチデバイス時代の学習を考慮した単語集活用方法についてお話しします。実践報告後にみなさんと単語集を使った学習に関して意見交換できることを楽しみにしております。

【後記】

 英単語集は巷に数あれど、その中から1冊を選び、学習者に応じた効果的な活用術を説くことは難しいだろう。学校で副教材として英単語集を与えられても、なかなか思うように活用できなかった筆者は、今回発表者の勤務校の学生を対象にした単語集の作成方法とその活用法、その効果を聞いて、それを使用している学生が羨ましいと思った。この単語集作成・活用のポイントは、次の3つである。

対象となる学生に本当に必要な単語を学習するための単語集の作成

学生の英語レベルや特性を知り尽くした教員により、学生に本当に必要と考える基本2000語を既存の単語リストや高校の教科書などから精選した。その単語は、頻度や学習効果を考慮して配置順序を決め、あえて1語1品詞、コアな意味を1つか2つに絞って提示することにより、学習の簡便さを図った。そして、品詞や意味と共に、語の使用場面や学生に馴染みのある例文をつけた。巻頭には品詞と発音記号の略説を、巻末には不規則動詞活用表と索引を設けた。

多様な活用方法を提案

単語集を学習するためにさまざまな仕組みを施した。紙の冊子を作成するだけにとどまらず、学生に「スタンプカード」を配布して単語学習の進捗状況を自覚させたり、イングリッシュ・ラウンジで英語を使う空間に足を運ばせたりしている。また、多くの学生が使用しているスマートフォンを活用すべく、ウェブサイト「Quizlet」を利用したり、デジタル音声プレーヤー用の教材を作成したりし、学生の興味を引きだす工夫や、学習のしやすさを追求している。

きめ細かな指導サポート

単語を覚える必要性はもちろんのこと、単語集の使い方を明示し、その使い方を実施する意義を説明した。その結果、学生は理解し納得した上で、単語集を使用して単語を学習することができる。授業内でも活用することによって、学習時間を増やし、単語学習をより身近なものにし、自発的な単語学習につなげている。学生からの単語集に関するフィードバックを受け取り、それを単語集や指導法に反映させ、よりよいものに改訂している。

 このように、この単語集は複眼的な考察の上に作成・活用されている。学生は、語彙学習を通じて、学習の楽しさ、動機づけを高め、できる喜びを感じることができる。できる喜びを感じた学生は、自信をつけ、それは様々な場面で活きてくることであろう。教育効果に寄与する単語集であると感じた。

[文責:小屋 多恵子]